駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

帰神報告

帰って来たのは3日深夜だったのですが、いろんな意味で濃い旅行だったので、さっきまで疲労困憊の有様でした。
これから例の「あしたのボクシング」用原稿の執筆に移りたいと思います。駒木が担当する部分は微々たるものですが、ここの読者さんをはじめ、全国のボクシングファンに喜んで頂けるよう頑張ります。

さて、試合から2日経った今でもなお、判定について喧々諤々のランダエタ×亀田興毅戦(ランキング上位の赤コーナー側選手を上位扱いしないのはおかしい)ですが、まぁ率直に言ってエゲつない地元判定という事で良いんじゃないかと思います。
主観によって個々の見解が割れるのは仕方ない話ですし、亀田勝ちの採点をつける人がいてもおかしくはないでしょう。ただ、それがジャッジ3人の多数意見となるべき結果かというと、まぁぶっちゃけ言ってあり得ない。亀田には1Rのダウンと11、12Rの明確な劣勢で負った(はずの)明確な4点分のビハインドがあるわけで、これ以外の残り9R──しかも相当優劣微妙な内容の──でそれを覆す(=少なくとも7R獲る)となると、採点する側に相当な“主観の偏り”か“精神的努力”が必要になるわけで。ましてやそういう人が3人中2人も居るってどういう事? ですよ。


しかし、この地元判定で何が悲しいかというと、「こんなのをボクシングと思わないで下さい!」とはとてもじゃないが言えないという事なんですよね(苦笑)。
例え話代わりに、マニアの友人と昨日の深夜、帰着の興奮冷めやらぬ中、酒飲みながらチャットで話していて出来上がってしまった「ボクシング担当記者の無知を装った悪意のある関係者突撃インタビュー」というブラックジョークを紹介します。

  • 「鬼塚さんと渡嘉敷さん、同じ協栄ジムの後輩で、お2人と同じように苦戦の末に世界戦を制した後輩に何か一言!」
  • 「元WBC王者の川嶋選手、2-1と割れた微妙な判定でしたが、どう思われますか?」
  • WBA王者の新井田選手、惜しくも微妙な判定で敗れた、かつてのライバル・ランダエタ選手にエールを!」
  • 「元OPBF王者の小松選手、今回の亀田選手の試合は地元判定による王座奪取と言われていますが、どう思われますか?」
  • 「元OPBF王者のトラッシュ中沼選手、最終12Rの帳尻合わせと疑われる採点はどう感じますか?」



……えぇと、関係者の方はあくまで酒飲み話のジョークという事でスリッピングアウェーして頂きたいのですが(笑)、まぁこの業界、地元判定の実例を挙げたらキリが無いわけです。ここ2年半で駒木が観戦した西日本の試合だけでも、
洲鎌栄一×エクトール・ベラスケス、中島健×レイ・オライス、高山勝成×エルマー・ゲホン、小島英二×アドルフォ・ランデロス、山本大五郎×ダウティ・バハリ、中島健×フランシスコ・ロサス、小松則幸×フェデリコ・カツバイ、三谷将之×ハイメ・オルティス、健文トーレス×クマントーン、坂本裕喜×デッチジャム・シスフォーダム
……といった試合は相当に地元判定の疑いがあり、また、この他にも勝敗こそ覆らなかったものの不可解なジャッジが行われたと思われる試合が相当数存在します。しかもこのリストに登場する日本人選手の大半は、これらの試合を足掛かりにタイトル挑戦・獲得への足掛かりを掴んでいるという事実も。これでは「地元判定はボクシングで起こる日常的な出来事の一つです」と言われても文句を言えないでしょう。


ただ、この地元判定というのは「八百長」「審判買収」という言葉で片付けられるほど単純なものじゃないんですよね。審判買収どころか気の利いた店で接待するカネにも事欠きそうな小さいジムの選手が地元判定の恩恵を受ける事もあれば、業界外の人でも名前を聞いた事があるような大手ジムの選手がアッサリ妥当な判定で負けたりもします。
今回の亀田戦で問題となっている協栄ジムだって、ロレンソ・パーラ×坂田健史の時は有効打数で押していた坂田が負けていますし、他のWBA戦でも「ベネズエラ判定」と言われる、地元不利・WBA本部のあるベネズエラ人有利の判定で日本人選手が敗れるという事もあったわけです。実際のところ、この問題は闇が深すぎてよく判らないですね。
地元判定が起こった理由にしても、贈収賄まがいの献金行為や接待攻勢が原因なのか、主催者側の意向を勝手に汲んで“空気を読みすぎた”結果なのか、トンチンカンな採点をしてしまっただけなのか、外野からは区別がつかないのです。それは今回のランダエタ×亀田戦も同様ですね。関係者の多くは試合前から「最終ラウンドまで立ってたら亀田の勝ちだよ」と冗談交じりに言ってたりしましたが、一番驚いているのはそんな“予言”を捧げた当の本人かも知れませんね。


ただ、駒木が絶対に断言しておきたいのは「地元判定は許せない」「地元判定は廃絶すべき」という事です。訳知り顔で「ま、地元判定もボクシングのうちだから」なんて嘲笑を浮かべる関係者がいたら、僕はその人を一生軽蔑します。
地元判定というのは、実質上の勝者が記録上の敗者となってしまう事。勝者として得られるはずだったモノの全てを失い、名誉すら剥奪されるという事です。それは記録上の敗者の人生を、一生を変えてしまいかねない程の影響力を持っています。それは決して許される事ではありません。


今回の試合を、あらかじめ勝敗の決まっている競技であるプロレスに喩える人が居ますが、僕はそれはプロレス関係者にとって失礼だと思います。プロレスラーは、勝敗を犠牲にしてでも観客を満足させる事に死力を尽くします。最後は無残な敗北者となって寂しく控え室に戻る役回りを強いられても、観客のために戦うわけです。
しかしボクシングの地元判定はどうでしょうか。観客の方を、ボクシングファンの方を向いていると言えますか? 満足するのは関係者と選手の身内、せいぜい熱狂的な選手個人のファンまででしょう。 
あらゆる地元判定に鉄槌を。そして、正当に認められる王者のみが君臨するボクシング界に。それが今回の試合を見た駒木ハヤトの願いです。


詳細なレポートはこちらに載せられませんが、とりあえずこちらではこんなところでご容赦を。

あと、どうでもいい補足

なんか8/2が有力暴力団組長・英五郎の誕生日という事で、亀田一家との癒着がネット上で囁かれていますが(というか勝谷誠彦が煽ってるみたいですね。テレビやネットで影響力の強い人物の発言にしては不用意じゃありませんかね)、かの組長と亀田父とは東京移籍を機に絶縁状態なんですよね。息子は個人的に応援してるみたいですが、今回の興行に圧力かけて働きかけたとかは考えづらいなあ。
詳しくはその英組長のウェブ日記(とりあえず“h”抜いて直リンクを避けておきます→ttp://www.ikuseikai.co.jp/hitokoto.htm)をご覧になればと。平成18年6月24日、5月7日&25日、3月10日、平成17年4月13日、2月24日辺りに亀田関連の事が否定的なニュアンスで書いてありますね。

さらにどうでもいい補足

なんか、やたらリンク張られてるのでもう少しだけ。
興行の世界というのは亀田やボクシングに限らず、漏れなく暴力団の世界と複雑に絡み合っています。なので直接的な支援の有無は別にして、興行をやる以上は義理を欠かない程度の付き合いはあるでしょう。道端の屋台が地元の“有力者”にショバ代払ってるようなもんで。
だから挨拶の一環としてそういう“筋”に招待券を撒く事ぐらいはやりますよ。格闘技好きの人はかの業界にも沢山いるでしょうから。何だったら、イーグル京和とかが後楽園ホールで世界戦する時に会場行ってみて下さい。狭い会場だけに、明らかに雰囲気が違うエリアが存在する事を確認できますので。怖い人が更に怖い人を慇懃に接待している凄い光景が見れますよ(笑)。