駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

西日本ボクシング協会「K−1出場、即“永久追放”」新規則案につい

書いてるのは6日ですが、便宜上日付をズラしてます。

さて、既に色々な所で話題になってますが、西日本ボクシング協会(=近畿・中国・四国地方のプロボクシングジム総括団体)が、ボクシング界、そして格闘技界の現状にかなり大きな一石を投じる規則案を公開しました。以下に要点をまとめます。

  • 規制の概要
    • 西日本のジムに所属していた元プロボクサーの内、後述の“規制の対象となる条件”に該当する者の「K−1等の総合格闘技」出場を禁止する。
    • この禁を破った場合は、西日本協会において公認プロボクシングジムの設立、および各種ライセンス(プロモーター、マネージャー、トレーナー等)の取得を半永久的に認めない。
  • 規制の対象となる条件
    • 元・世界王者(おそらくはWBAWBCの2団体)
    • 元・東洋太平洋王者
    • 元・日本王者
    • 元・世界ランカ−(これも恐らくはWBAWBCの2団体)

※現役選手は既に他種目のプロ格闘技との兼業を禁じられているので、他種目の競技に出場した時点で“元選手”になっています。


……何だかやたら厳しい内容に見えますが、しかし、よく考えてみるとこの内容は結構穴だらけというか、「永久追放」というよりも特定少数を対象にした「自粛勧告」のようにも見えるんですよね。

まず解釈が難解な「K−1等の総合格闘技」、これは婉曲的になってますが、経緯などから類推すると間違いなくK−1系の興行出場を想定したものだと思われます。最終的にはどういう括りになるか分かりませんが、悲しいかな、他のジャンルでは“元プロボクシング王者”というネームバリューは必要とされていないようですので、わざわざ高いギャラで釣ってまでネームバリュー相応の舞台でお呼びがかかる事はないでしょう。よって、事実上はK−1ルール、またはK−1のリングで行われる総合ルール試合に出場する事を規制するモノという事になるんじゃないでしょうか。
また、規制の対象となる条件がかなり限定的なのも特筆すべき点でしょう。この規制を逆手に取れば、「日本・東洋ランカーまでならA級ボクサーでもセーフ」という事になります。つまり、ボクシングで成功するところまでいかなかった選手が新天地へ旅立つ事は全く問題ないという事です。しかもK−1は現在では10階級あるうちのヘビー級とミドル級しか実施されていませんから、実際に規制の対象になり得るのは、“世界”までの距離が遠い中量級以上の選手のみ…という事になるでしょう。
で、それを踏まえて今回の規制の対象になりそうな元西日本所属の選手を探してみると、どうも先日惨敗した大東旭1人しか思い浮かばないんですよね(苦笑)。敢えて探してもあとは佐竹政一ぐらいでしょうか。また、今後対象になり得る現役選手にしても荒木慶大石田順裕の2人だけという事に。……う〜ん、どうもこれは「練習不足のままK−1に出て恥を晒した大東旭に引退を勧告し、第2・第3の大東旭の出現をストップしたい」だけじゃないのかなー、などと思うわけですが。それだったらまぁ賛成してもいいかなと思ってしまう自分が居ます(笑)。恥晒すだけ晒してボクシング界に出戻って来られて「今後は後進の育成を……」と言われても、既存のジムの会長連が「お前ふざけんな」と言いたくなる気持ちは十分判りますし。
──いや、勿論これは「安易な挑戦を思い止まらせる」という目的のみの賛同で、これに関連する様々な問題点が山積している事も理解しているんですけどね。「規制作る前に、食い詰めた元王者を養ってやるだけの環境や、中量級・重量級選手が活躍出来る舞台を作れ」という声もごもっともだと思いますし、これが他地区の協会でも適用されるとかなり厳しい事になるでしょうし。ただ、とにかくK−1のギャラっていうのは日本ボクシング業界の貧しさを差し引いても破格ですので、ちょっとやそっとの対策では焼け石に水なんですよねぇ。


とりあえず理想は、日本の中・重量級ボクシングシーンが、K-1のスカウトを鼻で笑って拒否出来るような所まで底上げ出来ればなぁ…というところでまとめておきます。あと、永久追放されてでもK-1に出て行って、更に真剣にK-1に向き合ってキッチリ結果を残せる選手が出て来たら、それはそれで拍手喝采を送りたいと思います。……で、そういう選手が出て来たら、また特例でボクシング界復帰可能とかになったりするんだろうけど(笑)。