駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

WBC世界スーパーフライ級タイトルマッチ12回戦/○《王者》川嶋勝重(判定3−0)ラウル・フアレス《挑戦者・同級14位》●

あの徳山昌守から1RKOでタイトルを“強奪”した川嶋の初防衛戦。興行権のオプションを握られているために、短い間隔でのタイトルマッチを強いられるハードスケジュールとなった。
 対戦相手に恵まれたとはいえ、ただでさえ難しい初防衛戦である上に、戴冠した試合が勝った本人も実感の沸かないようなあの内容。この試合に際しての王者陣営のプレッシャーは大変なものがあっただろう。

 1R。両者距離を取ってのジャブの応酬で牽制気味の立ち上がり。やや川嶋の動きが堅いのが気になる。徳山戦の川嶋からすると、まさに「明日は(今日は?)我が身」といったところか。ラウンド全般を通じて共に決定打に欠けたが、手数はフアレスの方が上。
 2R。このラウンドもフアレスは手数、手数でワン・ツーを次々と放つ。やや攻め手を欠く印象のあった川嶋だが、2分手前に右フックをフアレスのテンプル付近に打ち込んでダウンを奪う。ただしフアレスのダメージは深刻ではなく、KO狙いの追撃はかわされた。
 3R。再びフアレスが左ジャブ中心に手数を集めて細かいヒットを稼ぐ。川嶋は一発を狙い過ぎの印象。
 4R。このラウンドもフアレスの手数が川嶋のアグレッシブさを封じる。ただし川嶋も不完全ながら強打をヒットさせる。
 5R。このラウンドもフアレスの手数と川嶋の強打のせめぎ合い。細かいパンチをコツコツと当てるフアレスに対し、川嶋もスマッシュヒットを3発ほど浴びせてジャッジへ強い印象を与えてゆく。
 6R。フアレスのパンチを巧みなディフェンスで捌きながら強打を浴びせていった川嶋のラウンド。ゴング直前にはフアレスの弱点であるボディに強烈なアッパーを叩き込み2度目のダウンを奪う。
 7R。蓄積されたダメージによって完全に動きの落ちたフアレスに川嶋が襲い掛かる。2分過ぎには左のボディーブローで3度目のダウンを奪う。フアレスはダウンするたび故意にマウスピースを吐き出す時間稼ぎをしていたが、このラウンドで遂に減点1のペナルティを喰らう。
 8R。序盤こそつまらないパンチを浴びた川嶋だが、ボディ狙いから再び攻勢に転じる。
 9〜10R。フアレスのパンチは全く威力を失ったが、手数の多さだけは相変わらず。一方の川嶋はKOを意識し過ぎて動きが鈍い。両ラウンドともゴング直前に有効打を浴びせて格好はつけたが、ジャッジの採点ではフアレスを支持するものも。
 11R。川嶋は試合を決めに行き、またしてもボディブローを打ち込んでゆくが、決定打には至らず。フアレスは点数状況を無視した消極的なアウトボクシングでポイント稼ぎに終始。
 12R。最終ラウンドらしい激しい打ち合い。川嶋もポイント差で逃げ切るつもりなど無いとばかりに積極的に攻める。奪ったヒットの数は両者互角だが、1発ごとの威力はやはり川嶋。

 公式ジャッジは113-111、114-110、117-107で3者とも川嶋。ジャッジによって点数差が大きく分かれたのは、フアレスの手数と川嶋の少ない強打のどちらを優勢とするかで見方が分かれたからだろう。ちなみに駒木の採点は117-108で川嶋優勢。
 絶不調なりの戦いで何とか初防衛を果たした川嶋はこれで27勝(18KO)3敗。次戦はランキング1位選手との指名試合となる。今回の戦い振りを見る限りでは不安が先立つが、このインターバルにキッチリ体調面を整えて、王座を奪取した時のような好調さを取り戻してくれる事を祈りたい。


 《以下、ドラマチックボクシング観戦記》