駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第3試合・Sバンタム級6回戦/○井野秀作(判定2−1)桑原大樹●

12人参加の西日本ブロックを勝ち抜いた井野は、ここまで3RKO、判定3-0、判定3-0、判定3-0の勝ち上がり。派手さは無いが、総合的な実力はかなりのもので、西日本決勝も危なげの無い大差判定で勝ち上がって来た。なお、井野という苗字は実はリングネームで、不慮の事故で亡くなった同門の親友の遺志を引き継ぐという意味で名乗ったもの。本人はそれまで一般コースの練習生だったところを、友の死をきっかけにプロへの転向を決意したのだとか。
一方の桑原は8人参加の中日本ブロック覇者。1回戦から判定2-0、判定3-0、判定2-0と、際どいジャッジで勝ち上がって来ている。
この試合、駒木のすぐ隣の空席に、井野所属の鍵本エディジムの会長が座って陣頭指揮。横が気になって採点付き観戦メモが取り辛い(笑)。

1R。桑原がプレッシャーをかけて井野得意の中間距離を避ける試合運び。しかし井野も中盤以降、ワン・ツー中心の基本に忠実な攻めで有効打を奪い、主導権を握る。ただ、今日の井野はやや焦り気味に見える。
2R。井野、今日はガードが全体的に低く、桑原の左右のフックをたびたび被弾。ペースを持っていかれかけたが、後半に入って自分の距離を掴むと復調し、優勢に立った。両者、前・後半で主導権を分け合って、ジャッジ的には際どいラウンド。なお、このラウンドに桑原は偶然のバッティングで出血。
3R。距離を詰めての激しい打ち合い。手数こそ互角だが、この距離では桑原が一枚上。またしてもガードの甘くなった井野の顔面を左右のフックが次々と打ち抜いてゆく。一方の井野のフックは、顔面に当てに行った時にややオープン気味になるのが気になる。
4R。このラウンドに入って、井野はガードを見事に修正。相手のフックを全てガードして逆襲に転じるが、桑原も巧みなボディワークで攻撃をかいくぐり、距離を容易に広げさせない。
5R。思い通りに行かずにイラ立ったか、井野は冷静さを欠く戦い振りで桑原の求める接近戦を真っ向から受けてしまう。こうなると桑原が優勢に試合を進めてゆく。
6R。このラウンドも完全な泥仕合。井野も果敢に攻めてゆくが、ペースを完全に見失って次々と痛打を浴び、ややグロッキー状態に。このままこのラウンドのポイントを失い、際どい判定勝負に持ち込まれると誰もが思った終了1秒前、井野渾身の右カウンターがラッキーパンチ気味に桑原の顔面を捉え、起死回生のダウンを奪う。9-10の採点が10-8に化ける値千金の一撃だった。

公式ジャッジは59-54、58-55、56-57のスプリットながら井野。最後のダウンが無ければ1-1のドローでかなり際どい判定になっていた。駒木の採点では58-55で井野優勢。

勝った井野は8勝(1KO)2敗になった。今回の大苦戦を今後の糧にして、まずは西軍決定戦を持ち前の冷静な戦い振りで気持ち良く制してもらいたいところ。まさにあと一歩の所で敗れた桑原は4勝1敗1分。最後のダウンが無かったとしても勝者扱いになったかどうかは極めて微妙だが、勝負事の恐ろしさが身に沁みただろう。ジャブから試合を組み立てる場面がやや少なかった気がするので、今後はまず基本事項のおさらいから再起を目指して欲しい。