駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

WBAフライ級タイトルマッチ12回戦/○《王者》ロレンソ・パーラ(判定3−0)トラッシュ中沼《挑戦者・同級7位》

アウェイの地元判定で取りこぼした東洋太平洋タイトルをホームの地元判定で“強奪”するなど、スッキリした過程を経ないないまま迎えてしまったトラッシュ中沼の2度目の世界挑戦。相手のWBA王者・ロレンソ・パーラは24戦全勝。昨年の来日防衛戦時には最悪の体調で薄氷を踏む思いをしたが、今回はやや減量に苦しみながらもマトモな体調で臨戦過程を踏んできた。
試合の興味は、手数に乏しい少数強打タイプの中沼が老獪なアウトボクサーにどう立ち向かうかに集まっていたが、中沼陣営は前半の4ラウンドまでを捨てるという大胆な作戦でパーラのスタミナを削る事に専念した。しかし、王者の巧みなボディワークに加撃を封じられて大きな成果は挙げられず。逆にガードの上から無数のジャブを当てられてジャッジの点数を大きく失う。
中盤になると、アグレッシブさを増した中沼の左フックがたびたびパーラのボディに突き刺さるなどして主導権を奪いかけるが、勢いをつけすぎた中沼の攻めは粗く大振り気味になり、再び王者の復調を許してしまう。
9ラウンド以降の終盤には中沼のパンチはパーラにほとんど見切られてしまい、逆にガードの間隙を突かれて細かいパンチをまともに被弾する場面が多くなる。11ラウンド、12ラウンドに各1度ずつ、中沼の大きなパンチが出合い頭気味にクリーンヒットする場面があったものの、これらも試合の結果を左右する決定打には至らず。王者の手慣れたクリンチワークに翻弄されて、中沼の夢は夢のまま終わった。
公式判定は115-113、116-112、116-112(いずれもパーラ支持)。駒木のジャッジは117-112でパーラ。中盤まで中沼は堅固なガードで被弾を防いでいたのでジャッジに大差はつかなかったが、有り体に言って点数差以上の完敗と言ったところ。KO狙いタイプのヒットマンがこれだけディフェンスであしらわれては、それこそラッキーパンチでもなければ勝つ見込みは無かっただろう。試合後、中沼はスッキリした表情で引退を表明。陣営は「ボクサーは試合直後は引退を口にするものだ」とコメントしたが強く慰留するようにも見えず、本人が翻意しない限りはこのままグローブを置く事になりそうだ。