駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

WBCスーパーフライ級タイトルマッチ12回戦/○《王者》川嶋勝重(判定2−1)ホセ・ナバーロ《挑戦者・同級1位》●

コンディション調整に失敗し、安全パイだったはずの初防衛戦で思わぬ苦戦(まぁダウン3回奪ってはいたが)を強いられた川嶋が、チャンピオンにとって最大の試練である同級1位選手との指名試合に臨む。挑戦者のナバーロはオリンピックでの実績もあるというアマチュア出身の超エリートでここまで21戦全勝。識者の下馬評では「挑戦者やや優位」とされたが……。
試合は序盤からナバーロが、超高速のハンドスピードで繰り出すジャブ・ワンツー・左右フックの連打で機先を制して主導権を完全に掌握する。川嶋もガードを固めつつ果敢にパンチを返して行き、連打を強引に浴びせる場面も有ったが、やや精度に欠けた。逆にナバーロのスイッチヒッター気味のサウスポーという変則スタイルに翻弄され、2ラウンドには早くもパンチで目の上を切り裂かれて出血するハンデを負う。
中盤は近距離での打ち合いが続く激しい攻防に。ナバーロはショートアッパーで相手のガードを巧みに割ってインサイドブローで細かいヒットを次々に奪っていく作戦が見事にハマり、川嶋の顔面を見る見るうちに赤く染めてゆく。一方の川嶋もアグレッシブな反撃はするものの、ナバーロの堅守の前になかなかクリーンヒットを奪えない。たびたび大振りのフックが当たってはいるがオープンブロー気味でいかにも見栄えが悪い。7ラウンドにボディブローでナバーロをのけぞらせる場面もあったが、KOクラスのパンチは全てスカされた。
終盤4ラウンドはクリンチの多い泥仕合気味の試合展開に。共にアグレッシブに攻めたが、全体を通じて手数ではナバーロが優勢。川嶋はフックに全てを賭けるような戦い振りで、時にはクリーンヒットを奪ったものの、試合展開を大きく変えるような会心の一撃は最後まで見られなかった。ジャッジ的にはナバーロの手数と川嶋の強打のどちらを取るかで際どいラウンドが続いた。
公式判定は115-113、115-114(以上、川嶋支持)、120-109(ナバーロ支持)の物凄いスプリットデジションで、辛くも川嶋。駒木のジャッジは116-112でナバーロ支持。川嶋のオープンブロー気味のフックやヒットしたもののナバーロが全く効いたそぶりを見せなかった強打をどう取るかで、ジャッジによって5〜6ポイントぐらいのズレは起こりうる試合ではあった。が、川嶋にとっては自分に有利な見方をしてくれたジャッジが3人中2人もいたのは、非常に幸運だったと言わざるを得ないだろう。
ただまぁ、幸運に恵まれて、それを起爆剤にして更なる高みに達してしまうのが超一流のアスリートというものである。川嶋の真価は半年後の前王者・徳山とのリターンマッチで問われよう。彼は数多の一流選手のワンオブゼムか、それとも稀代の大器晩成型の超一流選手か、その答えは如何に。