駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第2部第5試合・フライ級4回戦/○奈須勇樹[Gツダ](判定3−0)久田哲也[ハラダ]●

ここからは新人王戦が3試合。まずは今期屈指の好カードとなったフライ級の準決勝第2試合。
奈須はここまで5勝(5KO)無敗のパーフェクトな戦績。トーナメントでは4/2の1回戦(http://d.hatena.ne.jp/komagi/20050402#p5)、7/9の2回戦(http://d.hatena.ne.jp/komagi/20050709#p6)と、いずれも一撃必殺の右ストレートで完璧なKOを奪っている。
対する久田は3勝(2KO)1敗の戦績。1回戦はシード、6/5の2回戦(http://d.hatena.ne.jp/komagi/20050605#p13)では、優勝候補の1人・松下泰士を相手に2ノックダウンを奪う鮮やかなKO勝ち。まだ能力の底を見せていない印象で、一気に注目株にのし上がった。
1R。奈須が仕掛けた積極的な打撃戦を久田が受けて立つ形で激しい攻防へ。奈須がワン・ツーにフックを有効打にすれば、久田もワン・ツー、アッパー、フックと多彩なパンチで応戦。ただ、ヒット数では奈須が確かにリード。
2R。両者トリプル以上のコンビネーションを繰り出す大変なハイレベルの戦い。久田が左ボディと右フックでヒットを奪うが、奈須はジャブから左フック、右ストレートをクリーンヒットさせて優勢を築く。
3R。ポイント面での劣勢を自覚した久田が覚悟を決めたようにラッシュをかけ、見栄えの良いボディブローなどで攻め込んでいくが、奈須は4回戦離れしたディフェンスで被弾を最小限度に食い止めると、後半には攻守逆転して左アッパー、右フックをクリーンヒットさせて逆転。
4R。久田がボディブローを起点にKO狙いの連打で勝負に出るが、奈須はこれに怯まず続けざまにショートを連発でクリーンヒットさせてゆき、優位を確保。
公式判定は3者とも40-36で奈須を支持。駒木の採点でも40-36で奈須。しかし、実力の差は採点結果ほど歴然としたものではない。
必殺級のパンチを持つ奈須を前に、久田が勇気を振り絞って打撃戦に応じた事で素晴らしい好試合になった。この試合に勝った奈須が8回戦出場の2人を差し置いてMVPとして表彰されたが、それも妥当と言える。全日本新人王決勝どころか、ビー・タイトの公式戦と言っても通用するほどの高水準。
そして勝った奈須は、これまで見せる事の無かったボクシング技術を見せ付け、能力の奥が深い所を証明した。もう一人の決勝進出者・金光と共に、自信を持って後楽園ホールに送り出せる逸材である。敗れた久田も負けて天晴れ。いずれ8回戦までは簡単に出世していってくれるだろう。