駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第11試合・ミドル級4回戦/●岡本直樹[尼崎亀谷](2R0分40秒KO)辻保裕[六島]○

両者戦績・臨戦過程

試合展望(55-45で岡本優勢)

ミドル級は1勝以下の選手ばかり7人が参加。負傷者も出るなど、やや低調な水準でトーナメントが進行されていった。
岡本はジムの所属ジムの会長が惚れ込む逸材という噂。1回戦では半分パニック状態の相手だったとは言え、26秒で見事なKO勝ち。しかし昨春のデビュー戦では打たれ弱さを露呈した敗戦との事で、1年経ってこのウィークポイントがどれほど改善されているか注目。一方の辻は、準決勝で対戦相手のラフファイトに苦しめられ、スコア差以上の接戦で辛勝。新人王決勝進出者とはいえ、実像はキャリア2戦のグリーンボーイで、未だ己のキャリアの浅さと戦っている現状か。
さて試合の展望だが、もし岡本が評判通りの素質を秘めているならば、スピード感溢れるファイトで辻を翻弄し、優位に試合を進めるだろう。しかし判断材料が少な過ぎて確固たる予想を立てるには情勢は流動的過ぎる。この試合もSフライ級やライト級同様、フタを開けてみないと判らないカードだ。
余談だが、辻の率いる応援団は色々な意味で見物。公共の場を私物化する勢いの猛烈な応援に、辻とは何の所縁も無い立場の観戦者は、数分でたちまちお腹一杯に食傷させられる事請け合いだ(笑)。

試合経過

1R。辻が軽やかなステップと4回戦ミドル級にしては速いジャブで手数先行、主導権を掴む。しかし岡本もステップワークとダッキングで辻の攻撃をほとんど不発に終わらせると、強引に強打を畳み掛けていってヒット数で上回り互角の形勢に持っていく。
2R。全体的なスピードで上回る辻がこのラウンドも主導権。ワン・ツーを効かせた後に強打を浴びせると、打たれ弱い岡本はたまらずダウン。しかしこの倒れた岡本に、辻はミルコ・クロコップ亀田興毅かというようなパウンド(倒れている相手へのパンチ)を浴びせる暴挙。レフェリーがダウンを宣告し、ニュートラルコーナーへ誘導させる前の出来事とは言え、これは不可抗力としても悪質な行為。岡本はカウント6か7の段階で立ち上がってファイティングポーズを取ったものの、北村レフェリーはダメージが濃いと見て10カウントまで数えてしまった。この裁定に対してトップロープをブン殴って悔しがる岡本、確かに同情に値するシーンである。
ダウン後の加撃は、その悪質さの割に比較的見逃され易い反則だとは聞くが、今回は本部席前ロープ際での反則で、これに対してオフィシャルの誰もが何も言わずにお咎め無しというのはさすがに如何なものか。ダウンは正当なものと認めた上で辻に減点1、そして岡本には反則攻撃のダメージを抜くためのインターバルを与える位の配慮が欲しかった。普段、オープンブローやローブローでは頻繁に減点を取っているのに、こういう時に断固たる措置を取らなければバランスが取れないのではないだろうか。
さて、勝ち方にミソはついたが、辻はミドル級の選手にしてはなかなか軽快な動きで、ジャブの打ち方も良い。目を見張るような強さは感じられないものの、西軍代表までなら面白い存在だろう。あとはこの後、どれだけ能力面の上積みが見られるか。敗れた岡本は、先述の通り大いに同情する場面もあったが、やはりダウンに至るまでの打たれ弱さは問題だろう。