駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第10試合・ウェルター級4回戦/○細川貴之[六島](判定3−0)好川大智[大阪帝拳]●

両者戦績・臨戦過程

試合展望(65-35で細川優勢)

今年のウェルター級は、このクラスにしては盛況の9人参加。細川は、たった2人だけ回されたブラサガリの1回戦から3連勝だけに、この決勝進出は価値がある。好川も秒殺含む2連続KOは立派と言えるだろう。
さてこの試合は昨年末、アゼリア大正で行われたオープン戦の再戦。ネット検索では詳細なスコアを知る事が出来なかったが、観戦した人に言わせると細川の完勝だったとのこと。だが、好川もこのトーナメントで自信をつけているだろうし、気後れする所は全く無いだろう。
試合は、強引かつパワフルなフックを主武器とする好川が積極的に仕掛けてゆき、これをディフェンス巧者の細川がいなして懐に潜り、細かいパンチを連打して反撃を狙う……という形で進行するのではないか。昨年末時点では通用しなかった好川の攻撃力がどれぐらいパワーアップしているかがカギ。1発クリーンヒットを打ち込めば大きなダメージを与えられる威力だけに、一度細川のディフェンスを突き破ってしまうと、決壊したダムのような怒涛のパンチの波で圧勝する可能性も否定できない。とはいえ、細川のガード・ダッキングの上手さは4回戦クラスでは飛び抜けており、普通に考えれば細川が淡々と好川の攻撃を捌いて確実な判定勝利を掴みそう。
少し気になるのは、細川が2回戦の1ラウンドで見せたエキサイトした姿。この試合でも冷静さを欠くような事があると、波乱の目が一気に大きくなる。既に10試合目、観戦者の集中力も切れそうな頃合だが、色々な意味で試合から目の離せない時間帯となりそうだ。

試合経過

1R。細川の軽快なステップワークが冴える。まずは大きく距離を開けて好川の攻めっ気を逸らしておいて、時折近距離に踏み込んでは細かいパンチを当てて行く。見事なヒット&アウェイだ。しかし細川の攻撃に有効打と言えるヒットは無く、好川も不完全ながらヒットを奪っており、このラウンドはほぼ互角。
2R。細川がこのラウンドも自分のペースを守ってヒット&アウェイ。ワン・ツー、フックの連打を繰り返してヒット数を稼ぐ。劣勢を悟った好川は、ラウンド終盤に意を決して果敢なラッシュを試みるが、これも逆にカウンターに右を合わせられ、2発有効打を被弾しただけで終わってしまった。
3R。このラウンドも細川が好川の攻撃を巧みなディフェンスで捌きつつ、ジャブを中心に細かくヒットを奪って主導権。まるで格上の選手がルーキーをスパーリングで稽古をつけてやっているような光景が延々と続く。途中、好川は得意の剛腕を振り回して一瞬細川を焦らせる場面もあったが、クリーンヒットは奪えず。
4R。細川は「どこからでも掛かって来い」と言わんばかりの姿勢で好川を迎え撃つ。好川の懸命の連打をことごとくスカしておいて、右でカウンターを奪う場面再三に及ぶ。その間もジャブでコツコツと手数とヒットを稼ぐ小技も欠かさず、ほぼパーフェクトな試合運びで最終ラウンドを締め括った。
公式判定は、宮崎40-36、上中39-37、北村39-37の3−0で細川勝利。駒木の採点も40-36細川。2〜4ラウンドが明白な細川のラウンドで、この判定勝利は覆しようが無い。
細川が持ち前のディフェンス技術で好川の攻撃を無効化し、リードジャブとカウンターでヒットを重ねて確実なポイントアウト勝ち。好川は、昨年末のリベンジを果たしたかったが、またしても実力が全く通用せずに完敗。ここまでの臨戦過程が決して恥ずかしくない内容だっただけに、細川の実力の高さがより一層浮き彫りになった格好か。細川は、この階級にしてはKO率が低いが、その代わり3−0判定勝ちの比率が極めて高い。それだけ地力と安定性がこのランクではずば抜けているという事なのだろう。