駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第9試合・Sライト級6回戦/○大崎丈二[ウォズ](5R0分39秒TKO)坂本将広[森岡]●

両者戦績・臨戦過程

試合展望(60-40で大崎優勢)

スーパーライト級は8名参加と、やや寂しい人数だが、決勝進出の2人はなかなかの腕達者。大崎は1回戦で1勝選手に格の差を見せつける試合をしたかと思えば、準決勝では危険なハードパンチャー・越崎の猛攻を巧みに凌いでポイントアウト。修羅場に強いというか、確実に自分の勝利へ近づくための手段を体が覚えているという感じ。一方の坂本は、戦績をご覧の通り少差判定の連続で際どく勝ちあがって来た。これは地力が足りないというわけではなく、前半の1、2Rで守勢に回りつつ相手の攻略法を探り、後半に粘り強く挽回する……というパターンが持ち味であるが故。
今回は両者共にこれまで対戦した事が無いであろう、バランス型の受身系(=相手の出方に対応して勝ちパターンを探る)タイプとの対戦で、いつもとは異なった試合展開に戸惑う場面も出て来るだろう。特にこれまではどこか穴のある相手と戦って来た坂本にとっては、かなりやり辛い試合になると思われる。最後は決定力で若干勝る大崎がジワジワとポイント差を広げて判定勝ちする可能性が最も高いが、ラウンドが進めば進むほど調子を上げていく坂本だけに、後半ラウンドに奮起して際どい勝負に持ち込む可能性もある。

試合経過

1R。最初は互いに様子を窺いつつジャブの突き合い。この静かな攻防を大崎が少差で制すと、その後は坂本が主導する形で接近戦へ雪崩れ込む。しかしここも大崎がショートフックでインパクトのあるヒット。坂本もショートボディをヒットさせて抵抗するが、若干の劣勢は否めず。
2R。ラウンド序盤、坂本が自分から大崎の懐に飛び込んでボディブローを再三ヒットさせてリードするが、中盤になると大崎も互角に渡り合うようになり、その後は強烈な振り下ろしの右フックが物凄い音を立てながら坂本の顔面を痛めつけた。ゴング直前にも追い討ちをかけ、最後の最後でジャッジ面でも大崎が優勢を奪ったか。
3R。大崎の右フックのダメージで坂本の左目付近が大きく腫れ上がって来たが、そこは根性の男・坂本。ラウンド前半を細かいアッパーなどインサイドブローを集めて優勢に支配する。しかしラウンド後半になるとまたも大崎が右フックをパワフルに効かせて挽回。ゴング直前にはクリーンヒットで坂本をグラつかせる場面もあって互角かそれ以上の情勢に。
4R。坂本はこのラウンドも積極的にインファイトを挑んでいく。大崎のガードの上下動を鋭く観察して、空いた方の部分にショートをヒットさせていく。だが坂本はダッキングなどのボディワークに乏しく、大崎が反撃に転じるとそれを思うがままに貰ってしまう。終盤にはまたも大崎の強烈な右フックが炸裂し、印象度では互角。
5R。坂本はこのラウンドも体を密着させて粘り強い戦いを展開するが、左目の腫れが尋常ではない大きさとなり、2度のドクターチェックの末に試合を止められた。正当なパンチによる負傷ということで、裁定はTKO。
戦前の予想に反して、接近戦での打ち合いが中心の激しい攻防となった。手数、ヒット数は互角だったが、大崎の右フックの威力とインパクトが突出しており、これが勝負の決め手となった。だが坂本も粘り強く食い下がっていただけに、途中で止められたのはさぞかし無念だろう。勝ち数規定によりこれが最後の新人王戦、せめて最後まで戦わせてあげたかったと思ったのは駒木だけではあるまい。