駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

亀田×ボウチャン戦観戦記更新しました。

遅れ馳せながら、3/8の亀田興毅×カルロス・ボウチャン戦の観戦記をアップしました。(→http://d.hatena.ne.jp/komagi/20060308)あと越本の世界奪取の試合もビデオがあるんですが、執筆はいつになるだろう……。


ところで「亀田場所」の客入り、巧みなカメラワーク(笑)で全体像は掴めなかったものの、どうやら後方イス席の辺りには空席が目立っていたように思えました。これほど視聴率が良いのに国技館が埋まらないというのも不思議な話なんですが、これは恐らく「いつ亀田が馬脚を現して惨敗を喫するか」を観るためだけに亀田の試合を追いかけている人が、純粋な亀田ファン以上に多いという事なんでしょうね。そういう視聴者層にしてみれば、わざわざ会場まで駆けつけ、高い入場料を支払ってまでテレビよりも観辛い所から観戦するなど、有り得ない話というわけでしょう。
今考えると、長谷川×ウィラポン戦中継の視聴率が伸び悩んだのも、どうもその辺に秘密があるような気がしてならないんです。つまり長谷川には純粋なボクシングファン・格闘技好きが注目しつつあるものの、アンチ長谷川ファンが殆ど居ない分だけ野次馬的一般層からの視聴者数が稼げていないという理屈ですね。
振り返れば、昭和時代のプロレスから平成のK−1、PRIDE、そして亀田3兄弟に至るまで、お茶の間で人気を誇ってきたエンターテインメント系格闘技中継には「こいつを誰か倒してくれ!」という世にはばかる憎まれっ子的な悪役キャラが付き物だったわけです。かつて辰吉×薬師寺戦がメチャクチャに盛り上がったのも、この両選手の片方、あるいは両方が、あらゆる立場の人にとってKO負けしてキャンバスを舐めるシーンを観たいと思わせる選手だったからと言えるのではないでしょうか。しかも、こういう見た目不遜な憎まれっ子キャラというのは、少なくない女性ファンが付くんですよね。亀田の試合に黄色い声援が増えて来ているのも、決して日本の将来に悲観してヤケになった若者が増えたわけではないと思います(笑)。
このパターンから外れた例外は少なくて、すぐに挙げられる実例と言えば、幼年・少年層から絶大な支持を受けた初代タイガーマスクぐらいでしょうか。子供は絶対的なヒーローを求めるんですよね。挫折を知らない幼子たちは、一点の曇りも無い快晴の太陽が好きなんです。
ただ、残念なことに、ボクシング界の真のエース・長谷川穂積は、どうやら憎まれっ子にも「小さなおともだち」のヒーローにはなれそうにない感じです。ならば謙虚で感情表現が不器用な彼と対極に位置するキャラクターのライバルがいれば良いのですが、その候補というと、今現在1階級下の亀田大毅ぐらいしか見当たらないというのが悲しいところでして(苦笑)。
……でも観たいでしょ? 亀田大毅が長谷川にボコボコにイワされる所を。マルチネスみたいに3ノックダウンでKO負けして心身ともボロボロにされて自分のコーナーに戻って号泣してるシーンを。だからこのマッチメイク──凄いミスマッチですが──を今すぐ実施しても凄い視聴率になるはずなんです。ただし、そういう色物・見世物に頼ってしまうと、後が大変になるのも間違いないので、これまた難しい。モンスター路線時代のK−1ヘビー級を見てた人お分かりでしょう? 見世物に食いついた客は見世物でしか引き止められないのだけれど、見世物に頼り過ぎると真摯で純粋なファンは徐々に確実に離れていってしまうものなんです。その辺の匙加減を理解した敏腕プロデューサーがボクシング業界にも1人居ればいいんですが、居ないだろうし、居ても業界のしきたりで潰されるんでしょうね。