駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

興行全体の総括

予備カード2つを含めてダウンシーン無し、バレロのTKO勝利以外は全て判定決着という、何とも観る者に厳しい興行となってしまった。好カード好勝負に非ずはガチ系格闘技の常とは言え、よりにもよってこの大事な興行がエンタメ的に落第点となる難しい試合のオンパレードになるとは思いもよらなかった。勿論、世界戦3試合は専門的・マニア的視点からすれば「ボクサーとその拳の織り成すアート」と言うべきハイレベルで充実した内容であり、筆者がその拳闘の真髄を心置きなく味わったのも確かである。しかし今回のような一般層〜ビギナー観戦者向けの興行で、平日の後楽園ホールに残業を放棄して駆けつけたり、週1度のボクシング中継のためにWOWOWに加入するような、上に「ド」の付くマニアにしか送り手の意図する事が理解できない内容の試合が続いてしまったのは不運・不幸としか言いようがないだろう。
そんな中で、会場の幅広い層に感銘を与える好ファイトを見せ付けたのは本望だった。決してクリーンとは言えぬ戦術、負傷TKOという消化不良気味の決着であったにも関わらず、彼の戦いが多くの観客の心を打ったのは、今日の彼の試合があらゆる意味で彼のボクシング人生の集大成であり、ボクサー・本望信人の生き様が透けて見えるものであったからだろう。彼は確かに試合に敗れた。完敗であった。だが、プロスポーツ選手として、不特定多数の観客へ向けてこの日最も価値の高いパフォーマンスを残したのは彼だったように思えてならない。プロボクサーとは何か、どうあるべきか、という問いに1つの明確な回答を得たという事実、ひょっとするとこれがこの興行最大の収穫と言えるのかも知れない。