駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第4試合・Lフライ級10回戦/○国重隆[大阪帝拳](9R0分53秒負傷判定3−0)赤木啓祐[倉敷守安]●

メインイベントは、大阪帝拳ジム軽量級エースの国重がノーランカーからの挑戦を受ける、OPBF挑戦流産直後の仕切り直し的一戦。
国重は17勝(2KO)2敗の戦績で、現在はWBCのLフライ級9位、そしてWBOでもJフライ級15位にランクされている。00年にデビュー後、翌年新人王戦にエントリーするも、緒戦で高山勝成[エディ(当時)]と当たる不運にも見舞われて敗退。だが、翌02年の再挑戦では全日本新人王タイトルを獲得している。その後は藤原工輔[正拳・引退]に不覚を取った以外は白星を重ねて日本1位のランクを長く保持し、そして昨年11月には中島健[Gツダ]との“OPBF挑戦者決定戦”と銘打たれた試合に勝利して中島から世界ランクも奪った。だが、タイトル挑戦権は何故か敗れた中島の方へ流れてしまい、勝った国重はノーランカー相手の調整戦という事に。複雑怪奇な業界事情の被害者となってしまった形だが、さりとてここで負けるわけにもいかぬ。ランキングを守り、目指すは念願のタイトル初挑戦である。
対する赤木は6勝(3KO)2敗1分。03年のデビュー以来、04年春の新人王挑戦(堀川謙一[SFマキ]に敗れて緒戦敗退)を除いた全ての試合を中国・四国地区で務めて来た。やや相手に恵まれたとはいえ8戦でA級昇格はスピード出世の部類。今回は昨年10月、地元倉敷で山脇正輝[大阪帝拳]に敗れて以来の試合。形の上では再起戦ながら、敵地遠征、そして世界ランカーへチャレンジする厳しいマッチメイクとなった。だが、この試練を千載一遇のチャンスに転換したいところだろう。
1R。赤木が前進しながらの手数攻めに出るが、国重はこれをクリンチとステップを駆使して捌きつつ、左ストレート、右フック、ジャブでヒット数優勢。赤木はロープに詰めてラッシュする場面も作ったが肝心のヒットが奪えず。
2R。赤木の強引な手数攻めに対し、国重は正面から受けて立ち迎撃作戦。この場面も国重が制してヒット数で先行。その後、赤木のフックでバランスを崩すシーンもあったが、乱戦気味の展開を確実な右フック、左ストレートで凌いでゆく。国重にしてはクリンチの少ない試合だが、慣れない打撃戦ゆえか動きが粗くも映る。
3R。赤木はこのラウンドも手数優先の粗い攻め。これを国重が左右のカウンターで迎撃してヒット数では大差。だが国重も動きに無駄が多く、やはりというか徐々にクリンチやホールドが増え始める。
4R。ここもクリンチ・ホールドの多い荒れた展開が続く。赤木が先手で手数攻めに出るが、やはり乱雑でヒットに殆ど繋がらない。国重も手数互角に迎撃してヒット数確保。形勢を微差にしても必ず互角以上にまとめる、国重流のインサイドワークが展開されている。
5R。共にパンチの距離が合わず、膠着戦に陥るが、国重が散発的ながらジャブ、ストレートでヒットを奪う。赤木はクリンチに絡め取られて攻勢のアピールすら難しい。
6R。国重がリング中央で試合を支配。赤木は攻め手が尽きて来たか、やけに大人しい。国重はここでも散発的に右ストレートを綺麗にヒットさせて優位。絶妙のクリンチワークが実に憎たらしい。
7R。再びアグレッシブに出た赤木だが、国重はストレートとクリンチワークで試合をコントロール。国重もフックがあからさまなオープンブローになるなど甘さを覗かせるが、終始ヒット数でリードして優位を築く。
8R。赤木が更に圧力を増す。国重はクリンチに頼る場面が多くなり、バッティングで左目付近に切り傷を負う。ラウンド後半には、国重が右ストレート2発を決めると赤木も連打を見舞うなど共に見せ場を作った。
9R。ヤマ場の無いガチャガチャした攻防が続いたが、赤木の強引な攻勢で国重の傷から流血。これを見た宮崎レフェリーは、リングドクターを呼んだ上で、ほぼ自己判断のレフェリーストップ。亀田×オガー戦で全国区となったダルファイト打ち切りを炸裂させた。
9Rまでの採点で争われた公式判定は野田90-83、原田88-84、大黒88-85の3−0で国重。駒木の採点は9Rを10-10で固定して「A」89-83「B」90-84で国重優勢。
国重が凡戦気味の試合内容ながら格の差を見せ付けて大差判定勝ち。ただ、慣れない打撃戦に出た際の動きのぎこちなさは世界ランカーとは思えぬほどで、彼の技術の歪さが改めて浮き彫りとなった。大阪帝拳ジムの吉井会長は、この勝利を受けてタイトルマッチを組む意向である事を発表したが、このクリンチに頼った試合運びが国内・地域王者クラスに通用するかは微妙といったところ。
赤木はアグレッシブに攻め立てたが、今日はそれだけで終わってしまった感じ。粗い部分も多々目に付き、今日のパフォーマンスはA級選手としては下位クラス。圧力・手数で攻めるならばもっと渋太さ、しつこさが欲しい。勿論、手数をヒットに繋げるための技術向上も必須課題である。