駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第1部第9試合・日本バンタム級タイトルマッチ10回戦/○《王者》三谷将之[高砂](判定3−0)菊井徹平[花形]《挑戦者・同級6位》●

王者・三谷は20勝(10KO)2敗の戦績。WBA12位、WBC13位の世界ランクも保持している。
02年デビュー。新人王戦は不出場だが、手足のスピード豊かなファイトは4回戦当時から西日本では評価が高く、それに応えるようにデビュー以来10連勝をマーク。しかしその間、慢性的な負傷に悩まされ、対戦相手にも恵まれない日々が続く。04年に初の関東遠征で初黒星を喫するなど、いつしか名目上の成績・地位が実質的なキャリアより先行している傾向が強くなっていた。
だが手術による長期休養を経た06年からはハードなマッチメイクに路線変更。休み明け緒戦でいきなり当時世界ランカーのハイメ・オルティスに挑戦し、微妙な判定ながらこれに勝利すると、2試合の調整戦を挟んだ後に空位の日本バンタム級王座決定戦で健文・KID・トーレス[大鵬]との世界ランカー対決を制して日本王座を戴冠した。
初防衛戦は互いに手の内を知り尽くした川端賢樹[姫路木下]と難しい試合を強いられたが、メキシコ合宿を挟んでの2度目の防衛戦では寺畠章太[角海老宝石]に2RKOで圧勝して評価を一気に高める。8月にはロリー松下[カシミ]の保持するOPBFタイトルに挑戦し、健闘空しく12RTKO負けとなりプロ2敗目。しかし日本タイトルは保持したまま、今回は1階級下の元日本王者を迎えて3度目の防衛戦で再起を図る。


対する挑戦者・菊井は21勝(4KO)6敗の戦績。97年にデビュー。以来4連勝を飾り、98年の新人王戦にエントリーするが東日本準決勝で敗退。続く再起戦にも敗れ、そこから1年のブランクを置く。しかし99年末に再起すると、いきなりの6連勝を皮切りに05年末まで12勝2敗の高勝率をマーク。その間に敗れたのは世界初挑戦から再起2戦目の内藤大助[宮田]と、後に日本王座を争う河野公平[ワタナベ]の2人だけ。勝った試合には河野とのリベンジマッチや、OPBF王座戴冠前の升田貴久[三迫]との対戦が含まれている。
06年にはタイトル戦線に躍り出て、相澤国之[三迫]との日本Sフライ級王座決定戦を制して国内王座を戴冠。元王者の有永政幸[大橋]との初防衛戦にも勝利したが、明けて07年、2度目の防衛戦で迎えた河野公平とのラバーマッチに敗れて失陥してしまう。その5ヵ月後にはWBC王者クリスチャン・ミハレスに乞われて敵地で世界初挑戦を実現させるが10RTKOで敗退。浮沈の激しいボクシング人生を過ごしている。今回は再々起戦にして、日本王座2階級制覇を賭けたタイトル挑戦。王者・三谷も真っ青の超ハード路線を歩んで、一気の再浮上を目指す。


1R。日本を代表するジャバーに相応しい、中間〜ロングレンジでのジャブ合戦。共に一流の動きを披露して一進一退の攻防戦。三谷がリング中央をキープして僅かに試合を支配したか。両者とも時にはアッパー交えて鋭い連打を放つなど、緊迫感溢れる幕開けに。
2R。菊井はジャブで鋭く牽制しては、頭から突っ込んでいって右ストレートを浴びせる硬軟取り混ぜた攻め。三谷もリング中央で試合を支配しつつ、鋭いジャブやストレートで菊井の顔面を跳ね上げてみせる。
3R。三谷が菊井の動きを見切ったか、的確なステップとガード中心のディフェンスを駆使しつつ、鋭いワン・ツー・スリーで有効打。菊井も右を返すが明確なヒット数では差が出た。
4R。菊井が三谷の機先を制する形で圧力と手数で攻める。三谷は受身に回ると反撃のきっかけを掴めず手数負けの形。カウンター気味にショートを当てたが、逆に菊井にロープに詰められて右を喰らった。
5R。主導権争いが熾烈を極める。試合のイニシアティブを巡っての打撃戦が続くが、三谷はラウンド中盤に左フック2発など印象的なヒット。菊井も圧力をかけて元日本王者に相応しい高度な攻めで三谷を脅かす。
6R。このラウンドも主導権の奪い合いで始まったが、三谷が先手で連打を放って手数で優位。菊井も断続的に距離を詰めていって強引に主導権を奪おうと試みるが、三谷はクリンチとステップを駆使して付け入る隙を与えない。
7R。三谷はここも主導権確保に成功。連打を的確に放ち、ガード上ながら当てていって菊井の攻勢を封殺する事に成功する。ラウンド終盤、両者右ストレートを交換するが、その前に三谷は右アッパーで有効打を奪い、一歩リードしていた。
8R。このラウンドも三谷ペース。菊井の攻勢をクリンチで捌き、自分の連打で相殺しながら更に連打を放って打ち勝ってゆく。ワン・ツーなどで有効打も積み重ね、リードを確保する。
9R。圧力を欠けてショートを強引に捻じ込む菊井、これに対して豊富な手数で攻め、時折鋭いヒットを奪う三谷で互角。
10R。菊井の突進を絶妙のジャブで食い止めた三谷が最後も主導権を確保。菊井も懸命の攻勢で互角近辺に奮闘するが、三谷は要所で明確なヒットを積み重ね、ジワジワと差を広げていった。
公式判定は原田99-93、宮崎98-92、土屋98-92の3−0で三谷が3度目の防衛に成功。駒木の採点は「A」98-92「B」99-93「C」98.5-94でいずれも三谷優勢。
三谷が細かいステップワーク、インサイドワークで主導権争いを制し、手数を効率よくまとめて小差リードのラウンドを量産した。時折決める有効打にも相手とのパンチ力差を感じた試合。
菊井は生命線とも言えるジャブの打ち合いで見劣りし、ならばと狙った圧力攻勢はクリンチで絡め取られてしまった。明確なヒット数や手数の争いでも及ばず、パワーと技術の差がそのまま点差に現れた試合となった。