駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第5試合・バンタム級8回戦/○橋詰知明[井岡](判定3−0)橋口竣[正拳]●

橋詰は7勝(4KO)2敗2分の戦績。アマ時代に国体少年の部近畿予選優勝を果した直後、17歳でプロ転向。デビュー戦でいきなり6回戦ボーイ相手にドローに持ち込むなど才能の片鱗を窺わせ、開幕前からPFP候補筆頭の前評判を得ていた06年度の新人王戦では西日本制覇を成し遂げる。だが西軍代表戦では、後の全日本新人王&現日本ランカーの林孝亮[緑]と僅差のスプリットデシジョンで敗れ後楽園進出はならなかった。今年は4月に敵地遠征でドロー、7月には松元雄大[Gツダ]に敗れるなどスランプが続いたが、10/14に竹本裕規[風間]に大差判定勝ちして踏み止まった。
橋口は6勝(2KO)5敗1分の戦績。05年にデビューするが、この年は未勝利3敗1分に終わる。地力がついて来たのは06年秋ごろで、同年9月から07年2月まで3連勝して漸くB級昇格すると、B級緒戦の1敗を挟んで今年7月、10月と堀江純平[大阪帝拳]に連勝して一気にA級昇格を果たした。


1R。橋口はアグレッシブに仕掛けてゆくが、パンチの精度やハンドスピードは8回戦では物足りない。橋詰は次第に余裕を持ち始め、橋口の攻勢を捌きつつストレート、フック、アッパーを自在に見舞って最後はノーガードで挑発するパフォーマンスも。
2R。このラウンドも橋詰は余裕を持った試合運び。橋口の攻勢を捌いて左フック、右ストレート、アッパー。ヒット・有効打を連発してこのラウンドも大差優勢。
3R。橋詰のワンサイドゲーム。右アッパー連発でヒット数・手数で完全に優位。橋口のパンチはやはりここでは精度不足が目立つ。勝ちたいという気持ちは十分伝わってくるが、力量差は歴然。
4R。窮地に立たされている橋口だが、このラウンドは序盤に大攻勢。左から右構えにスイッチするや猛烈に連打を浴びせて先制する。しかしその後は橋詰がスピードを活かしたジャブ中心の攻めでヒットを稼いで徐々に挽回。主導権もいつの間にか橋詰の手に。
5R。気持ちばかりが前に出て不用意に前進する橋口に対し、橋詰はジャブ、アッパーで軽快に迎撃して圧倒。KO狙いには出ず、まるで嬲り殺し。橋口は「肉を斬らせて骨を絶つ」を狙うが、傷つくのは己の肉ばかり。
6R。橋口は圧力とボディ狙い中心。これにも橋詰は退かず、フック、アッパーを当ててヒット数では大差。だがこのラウンドは橋口の“アグレッシブ”要素での健闘が目立った。
7R。クロスレンジ打撃戦。しかしパンチの精度で大きく勝る橋詰がここでも大差優勢。橋口のパンチは空を切るばかりで、終了ゴング前にはTKO負け寸前の大ピンチ。気持ちの強さでここも乗り切ったが、既に勝機は逸した印象。
8R。橋口が最後の力を振り絞って右で先制打を挙げるが、橋詰はクロスレンジから右アッパーを連発し、更にショートフックも連発で見舞って大差優勢。橋詰は最後まで連打、連打で攻め立ててKOも狙いに行ったが、ノックダウンまでには至らず。
公式判定は野田80-72、宮崎80-72、原田80-73の3−0で橋詰。駒木の採点は「A」80-72「B」80-74で橋詰優勢。
橋詰が技術とスピードの優位をそのまま試合内容に反映させて圧勝。だがA級昇格以来の課題である決定力不足がこの日も目立った。日本・東洋ランキングを狙うためにも、倒せる時にキッチリ倒せるだけのパンチ力や攻め方の工夫が欲しい。
橋口はA級の壁に激しく打ち付けられた形。パンチの精度不足が、ここでは誤魔化しきれなくなっている。最後まで気持ちは切らさず、アグレッシブに攻め続けたのは評価出来るのだが……