駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第2部第3試合・バンタム級10回戦/○本田秀伸[Gツダ](判定3−0)西正隼[正拳]●

本田は28勝(14KO)5敗の戦績で、現在日本Sフライ級4位。94年のデビュー以来、順調に勝ち星を積み重ね、96年には日本Lフライ級王座を獲得。ノンタイトル戦を頻繁に挟む意欲的なマッチメイク方針の中で王座を返上するまで6度の防衛に成功する。しかし02年にはポンサクレックWBCフライ級王座に、03年にはアレクサンドル・ムニョスWBAスーパーフライ級王座に挑戦でいずれも判定負け。04年には再起を賭けて挑んだ当時無名の名城信男[六島]との一戦に完敗を喫し、一度は引退にまで追い込まれた。しかし現役への未練は断ち切れず06年秋に復帰。同年末の再起2戦目で元OPBF王者のクマントーンに勝利したが、07年3月には名護明彦[全日本パブリック]との“元世界タイトル挑戦者対決”に敗れている。今回は名護戦以来9ヶ月ぶりの再起戦。
対する西は8勝(4KO)6敗2分の戦績。02年にデビューするが、新人時代は勝ったり負けたりを繰り返し、04年に出場した新人王戦でも2回戦敗退に終わっている。6回戦に上がっても連敗スタートと冴えなかったが、06年から6回戦で連勝してA級昇格。7月、10月と8回戦で連勝して勢いに乗る。ジム側も充実振りを認め、今回から積極的に日本ランカーへ挑戦していくようだ。
1R。本田がジャブを駆使して拳の圧力で西にロープを背負わせ、そこでタイミング良く左ストレートでヒットを重ねてゆく。西は完全に本田の手のひらの上で転がされている印象。手数を返すも完全に捌かれてしまう。
2R。このラウンドも本田がジャブと左ストレート、そして熟練の守備で優位。西もラウンド後半には強引なラッシュでオープンブロー気味ながらヒットを重ねるが、手数と“リング・ジェネラルシップ”要素の劣勢は歴然。
3R。本田のペース。余裕綽々に西の攻勢を捌ききっては左ストレートを上下に叩き込んで大差圧倒。
4R。西が強引な攻勢に出て、頭・肩・肘を入れつつのラフファイト。本田はそれでもクリーンヒットを許さず、逆にアッパーなどで反撃するが、流石にこのラウンドは守勢が目立つ。
5R。西のラフな攻勢に対し、本田は守備技術の博覧会のような試合運び。カウンターでヒットも稼ぐ。西のパンチは不完全なヒットしか生み出さない。
6R。西はここも強引な攻めだが、本田はこれを巧みにいなしつつ、手数攻めで主導権掌握。本田は西が突進するところに肘を置いて待ち伏せする“裏技”まで披露する。
7R。「本田先生のディフェンス講座」とも形容すべき展開が続く。西は突進を繰り返すが、殆ど無効化されて逆にカウンターや狙い撃ちを浴びてしまう。終了ゴング前に漸く一矢報いるが……
8R。西の強引な攻勢で右が2発クリーンヒットするが、試合をコントロールするのは本田。軽打中心ながらラウンド終盤に反撃して、ポイント確保は危ういものの格好はつけて見せた。
9R。本田が攻撃比率を増して、勝利への意欲を見せる。巧みにショートをボディ中心に散らしていって優勢。西は闇雲に突進するばかりで全く攻撃が当たらない。このラウンドは本田のパーフェクトゲーム
10R。西の愚直な突進→クリンチの繰り返し。その中でも本田が渋太く立ち回って手数でリードし主導権をアピール。西はアグレッシブだが採点基準上の「乱暴な突進」に終始。
公式判定は宮崎99-91、原田99-92、野田99-92の3−0で本田。駒木の採点は「A」98-92「B」99-94で本田優勢。
専門誌でも報じられた通り、「本田先生のボクシング教室」という趣の10R。持ち前のディフェンスワークを存分に見せ付けて余裕綽々の大差判定勝ちを果たした。パンチ力不足を感じさせたり、各ラウンドのどこかでミスをしてしまう辺りに衰えと限界も感じさせるが、今日のレベルの相手は全く問題にしない。
西は1〜2Rの時点でもはや勝負あり。あとは無策のままチャージを続けるばかりで生殺しにされてしまった。ささやかな抵抗でフルマーク負けは阻止したが、戦いながら劣勢を克服する術を見出す力が無くてはランカー相手の勝利は覚束ない。