駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第2部第2試合・Sフライ級契約ウェイト(51.5kg)10回戦/●岡田正継[Gツダ](10R0分56秒TKO)久田哲也[ハラダ]○

岡田は8勝(3KO)10敗3分の戦績。01年にデビュー、02年の新人王戦では西日本決勝で国重隆[大阪帝拳]に敗れるも、03年の再挑戦では堀川謙一[SFマキ]、山口淳一、橘悟朗と後の日本ランカーを3タテして勝ち進み、西軍代表まで進出する。しかし全日本決勝では判定負け。丸1年のブランクを経ての再起戦でドローとなって(B級1勝2分で)A級昇格を果たしたものの、05年から現在に至るまで泥沼の7連敗。対戦相手の大半が日本ランカー以上の日本人や、東南アジア遠征での世界ランカー戦だったものの、03年9月以来実に4年3ヵ月勝利の美酒を味わえていない事になる。今回は久々のノーランカー相手の試合。いつの間にか負け越しに転じた星勘定を戻しておきたいところだが……
久田は8勝(3KO)4敗の戦績。03年デビュー、新人王戦では04年に緒戦で本田猛[尼崎]に敗退、05年度も、西日本準決勝で後の全日本新人王・奈須勇樹[Gツダ→角海老宝石]に同年の西日本新人王戦でも屈指の激闘の末に敗退した。その後は連勝しながらも一時スランプに陥った時期もあったが、徐々に復調。6回戦で3勝1敗とジックリとキャリアを積み重ねて、07年5月のA級緒戦では竹本裕規[風間]にウェイトの差を克服して判定勝ち。前回8月の難波拓人[明石]戦では微妙なスプリット・デシジョンに泣いたが、A級での活動にメドを立てて臨む今回の再起戦で初の10回戦に挑む。
なお、この試合は当初フライ級リミット(50.8kg)の契約だったが、計量直前の段階になって体調を崩し体重調整に失敗した岡田のために急遽契約ウェイトを変更。しかし岡田は結局52.0kgまでしか落とせずグローブハンデを課せられた。久田は50.8kgで計量をパスしているため、実質1階級のハンデキャップマッチという事になる。岡田にも多くの釈明の材料はあろうが、体重調整はプロボクサーにとって最低限のノルマであり、これを全く果たせないというのはプロ失格の悪質行為であると言わざるを得ない。コミッションもこのような大幅な体重超過には、(パンチの威力減殺だけでなくグローブの大きさを活かせてしまう)グローブハンデよりもむしろ坂田×パーラ3のように、当日に非公式の計量を課す等の措置を採用すべきであろう。
1R。岡田がアグレッシブにワン・ツー、逆ワン・ツー中心に手数攻勢。久田はパーリング中心に捌きつつボディへ手数を返すが、守勢の時間が長い。
2R。このラウンドも岡田のアグレッシブなワン・ツー攻めに久田は押され気味。後手に回って手数を出し切れない。ヒット数でも岡田が確実に小差のリード。
3R。漸く久田のパンチのタイミングが合いはじめ、右・左1発ずつ有効打を奪う。岡田の手数はガードで封殺されるが、攻勢点確保と主導権支配の役割は果たしている。
4R。岡田のスピード活かしたコンビネーションはヒットこそ少ないが、手数と主導権支配で有効。久田も距離を詰めて打撃戦を挑むが、まだ捌かれている印象の方が強い。
5R。岡田は病み上がりと思えぬスピード全開。サイドステップで小さな円を描きながら久田を翻弄。ラウンド終盤にはアッパー、ワン・ツーでヒットも集めてリード確保。
6R。久田が圧力をかけて打撃戦を挑むが、追い足が「追えず足」になってしまっている。岡田がステップで捌きつつカウンター気味にヒット数で先行。
7R。これまでと同様の展開が続く。手足のスピード衰えぬ岡田はこのラウンドも手数の山を築き、右のクリーンヒット2発で追いすがる久田を大半の時間帯でコントロールする。
8R。久田の追い足を岡田が捌く展開が続く。久田の右ストレートがクリーンヒットして岡田がグラつくシーンもあるが、ほぼ全ての局面で岡田が主導権を掌握している。
9R。岡田のスピードが漸く衰え始め、久田の攻勢。右ストレートをクリーンヒットさせて一気に岡田をグロッギーに追い込む。しかしラウンド後半に入って岡田も猛反撃で食い下がる。終了ゴング直前、久田はボディ攻めで何とか突き放してポイントアウト。
10R。久田が一気攻勢。ボディフック、アッパーを次々決めると、岡田は露骨に効いた素振り。そこへすかさず久田が追い討ちをかけると、体をよじって苦しそう。これ以上は危険と見た半田主審が割って入って、久田のTKO勝利となった。
ジャッジペーパーを見ると9Rまでで三者三様、10Rで久田優位のまま終われば2−1で久田勝利となるところだったが、久田本人は「判定勝ちは不可能な劣勢」との情勢分析。9R、10RとKO狙いの一気攻勢は危機感の表れで、それをTKO勝利に繋げた決定力は賞賛に値する。今回はスピード劣勢をパンチ力優位で克服するモデルケースと言うべき試合。ただ、強打がやや流れ気味で、まだダメージが相手に伝わりきってないのがランカー級との差だろう。
岡田は病み上がりとは思えぬ絶好のデキで8Rまでは試合を完全に掌握していたが、調整に失敗した腹を打たれて急失速。最後は意識朦朧の中で戦っていたらしい。これで8連敗。悪い時には悪い事が重なる典型とも思えるが、今日の動きを見ればまだまだやれる。万全の体調で巻き返しを。