駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第2部第1試合・Sフライ級10回戦/○久高寛之[Gツダ](判定3−0)フセイン・フセイン[豪州]●

第1試合からいきなりの大勝負。Gツダの若手最有望株・久高が強豪世界ランカーに挑戦するチャレンジマッチだ。
久高は15勝(5KO)6敗1分の戦績。紆余曲折あって乱高下したランキングは現在日本フライ級の5位。
02年に17歳でデビューするが、いきなりの連敗スタート。しかし03年には1つの引分を挟んで4連勝する快進撃を見せ、本命扱いで臨んだ04年の新人王戦では、途中で骨折のアクシデントに見舞われながらも勝ち上がって遂に全日本制覇を達成する。
日本ランカーとして迎えた05年には清水智信[金子]に敵地で敗れるも、バート・バタワン[比国]を撃破して一躍世界ランクを獲得して飛躍を見せる。06年は苦戦も挟みながら4連勝をマークし、07年4月にはトップコンテンダーとして吉田健司[笹崎]との日本フライ級(暫定)王座決定戦に出場したが、思わぬ苦戦の末に完敗を喫し、大きな頓挫を経験する。その後は5月、8月とタイ、フィリピンに遠征して地の利無く連敗。今回は3連敗中と言う最悪の状況ながら、その苦境から脱するための千載一遇のチャンスを迎えた。資金難顧みずローリスク・ハイリターンのマッチメイクを実現させた所属ジムの心意気に応えたい所だろう。
対するフセインは31勝(24KO)3敗。WBCフライ級4位、WBA同級8位、IBF同級10位と3団体の世界ランクを保持している。98年にデビューし、以来23連勝をマーク。03年11月、24戦目で迎えたWBC世界戦は最強王者・ポンサクレックの前に12R判定で敗れるも、すぐさま再起して05年2月に再起後4連勝でOPBFフライ級タイトルを獲得する。この年、ホルヘ・アルセとの2戦(WBC世界王座挑戦者決定戦&WBC暫定王座戦)に敗れた後は、やや勢いに翳りが見えた感もあるが06年〜07年8月までに3連勝して世界ランクをキープしている。
1R。ガードを固めて圧力をかけるフセインに対し、久高はワン・ツーをガードの上ながら的確に散らして手数で先行。フセインは馬力型選手らしい様子見で手数が少ない。
2R。フセインが右ショート有効打で先制し、ジャブも増やしていよいよ本腰か。久高はワン・ツー連打もガードの上で、膠着した展開に持ち込まれる。久高は相撃ちながら右カウンターを当て、その後もショートアッパーを交換した。
3R。このラウンドも膠着気味。フセインは圧力とクリンチでラフに攻めつつ左ボディを狙い打つ。久高は散発的ながら右ストレートの切れ味が鋭い。
4R。フセインは距離を取って慎重なボディ狙い。久高はクリンチに阻まれて手数を出せない。ラウンド終盤に右ショートを振り下ろしたがフセインの強引な主導権掌握術を跳ね返せず。
5R。このラウンドも序盤は膠着していたが、久高は右カウンターを効かせると、ロープへ詰めて猛ラッシュ。フセインも狡猾に反則スレスレの攻撃を仕掛けるがこれは苦し紛れに映る。
6R。フセインは再び圧力攻めでボディ、右ストレートを狙うが、久高も鋭くストレートで応戦。ラウンド後半には右アッパーをクリーンヒットして効かせ、ヤマ場を作る。ややかみ合わない展開ながら久高有利に傾き始めた。
7R。フセインはロープを背負って久高の攻めを誘ってカウンター狙い。勝つためにはあの手この手でやって来る辺り、流石は世界トップランカー。有効打の少ない展開ながら、久高が“アグレッシブ”要素で優位。ラウンド終盤には、久高はスピードを活かしたヒット&アウェイを披露して主導権もアピール。
8R。ガードを固めて手数を減らしたフセインに、久高はジャブ、ボディブローと巧みに打ち分けてリード。フセインも左カウンターで有効打を返すが、ラウンド後半に入ると久高が攻勢に出る。フセインは終了ゴング前に反撃に出てポイントを掠め取ろうとするが、久高はここも凌いだ。
9R。接近戦狙いのフセインに対し、久高は先手でジャブ、ストレート。だがフセインも渋太く重いワン・ツーを放って肉薄する。久高は手数でリードするが、ここは明確なヒットに乏しかった。
10R。圧力かけるフセインに対し、久高はワン・ツー連打で手数リード。フセインはスピード不足で主導権を奪えず後手に回る。久高は終始先手で攻めてポイントをガッチリ確保。
公式判定は野田98-92、原田97-94、半田97-95の3−0で久高。駒木の採点は「A」97-93「B」99-94で久高優勢。
久高がスピードとキレのあるコンビネーション、確実な守備で強豪に完勝。世界ランク復帰を確実にした。東南アジアでの敵地戦で揉まれた成果が総合力アップに繋がっている模様。
フセインはパワーファイトに技巧を組み合わせた選手で、やはり東洋圏では上位にランクされて然るべき強豪だった。今日の敗戦は久高との実力差と言うより相性の悪さが反映されたものかも知れない。