駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第2部第9試合・ミドル級8回戦/○鈴木哲也[進光](判定0−3)福森智史[正拳]○

鈴木は18勝(13KO)7敗の戦績でサウスポー。現在はミドル級でOPBF4位、日本1位。99年デビュー、3連勝から00年度にSライト級で新人王戦に挑むも2回戦敗退。翌01年にはウェルター級で再挑戦するが、西日本決勝で丸元大成[Gツダ]に敗れる。再起後は6回戦を連勝でA級昇格。03年までは3勝3敗と苦しい星勘定が続くが04年、05年には韓国・タイ人中心ながら5連勝してキャリアを積み、06年には板垣俊彦[木更津GB]が保持していた日本ミドル級王座に挑戦する(判定負け)。再起後はタイ人相手に連勝後、前WBF王者という経歴のアルメニア人に敗れる不覚。9月に森広和義[広島三栄]を2RKOに沈めて再起を果たし、日本タイトル再挑戦も目前の位置まで立て直した。今回は前回に続いて新人王戦西軍代表経験者との対戦。パンチ力ある若手ホープを相手に格の差を見せ付けたい。
対する福森は8勝(5KO)1敗2分。05年末にデビュー戦勝利し、06年の新人王戦ではドロー勝者扱い挟む4連勝で西軍代表まで進出。淵上誠[八王子中屋]との全日本決勝でも健闘するが惜敗。07年7月に再起、1つのドローを挟んで2つのKO勝ちでB級を突破し、今回が初の8回戦となる。
1R。福森が圧力をかけ、ロープに詰めて先手取るが、小さくなったウイニンググローブのガードの隙間から鈴木のジャブを浴びてしまう。福森は左ボディを狙うがクリーンヒット無く、鈴木のメリハリ利いた動きと的確なワン・ツーにしてやられた格好。
2R。福森はこのラウンドもアグレッシブに出て、ジャブとワン・ツーで手数先行。しかし鈴木は横のステップでサイドに回りこみつつ、右フックでヒットを稼ぎ主導権も支配。福森は相手の正面でしか動いておらず、試合振りが真っ正直過ぎる傾向も。
3R。鈴木の右が性格に福森の顔面やボディを捉える。福森もジャブ、ボディフックでヒットを返すが、数的にやや劣勢か。鈴木に終始ロープを背負わせて攻勢点はアピールするが?
4R。ジャブ、ワン・ツー中心にショートレンジでの手数合戦。鈴木が老獪なハンドテクニックで福森をいなそうと試みるが、ここで遂に福森のキラーショット・左ボディが3発命中。鈴木は明らかなダメージを隠せない。
5R。鈴木はボディのダメージが抜け切れず苦しさを露骨に現す。福森の打つタイミングに併せて手数を出し、相手のパンチを相殺しながら攻撃する渋い作戦で何とか凌ごうとするが、福森はお構いなく肝臓目がけて痛打を見舞う。KOすら予感させる大ダメージ。
6R。鈴木はワン・ツー連打をこれでもかと打ち出してパンチで弾幕を張る作戦。しかし福森は限定された攻撃の機会にすかさず強烈な右ストレート、左ボディを浴びせて完全に優勢。鈴木のパンチから力感が消えた。
7R。軽打で凌いで判定勝ちに持ち込む覚悟を決めたか、鈴木はジャブとストレート、左のトリプルと速射砲で福森の攻めるチャンスを潰して主導権奪回。ゴング前には左ストレートでヒット連発。
8R。鈴木はこのラウンドも細かいパンチで弾幕を張り、左ストレートを鋭く決めて逆に福森を効かせてゆく。その福森は手数の大半を相殺される中、懸命に左ボディを攻めるが、最終ラウンドとあっては決め手にならず。
公式判定は野田78-74、坂本78-75、半田77-76の3−0で鈴木。駒木の採点は「A」77-75「B」77-76で鈴木優勢。
鈴木は左ボディを効かされて大苦戦も、老獪な手足捌きと手数攻めで勝負処をキッチリ押さえて小差リードを守り切った。日本ランカー級としてはパンチ力で劣る所を逆手にとった物量作戦はお見事。経験で勢いを捌き切った試合。
福森は小さいグローブで得意のガードの効果半減、相手の熟練のテクニックに剛腕を封じられて苦しんだ。左ボディで中盤戦を支配し、あと一歩という所まで追い詰めたが、最後はキャリアと技巧で押さえ込まれた。細かい距離や間の奪い合いなど、B級まででは必要とされなかったテクニックを要求され、土壇場で悪い意味の若さが出てしまったか。