駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第2部第5試合・ライト級契約ウェイト(60.0kg)/●山崎晃[六島](9R1分41秒負傷判定0−2)金丸清隆[正拳]○

山崎は11勝(6KO)2敗3分で現在日本Sフェザー級9位。アマ時代には全日本3位などの実績がある。03年に26歳でB級デビュー以来、1つの負傷ドローを挟んで5連勝し、OPBFランキングにも登載。04年末には現世界王者・小堀佑介[角海老宝石]と互角以上の内容でドローに持ち込む健闘を見せた。05年に入って小堀との再戦に敗れ、その後はやや試合枯れ気味で骨のある対戦相手にも恵まれず、1ドローを挟んで再び5連勝するもランキング下位での停滞を強いられた。それでも今年2月、漸くOPBF挑戦の機会を得たが、内山高志[ワタナベ]に10RTKO負け。6月の再起戦で木原和正[ウォズ]を際どく退け、再度のタイトル挑戦へ向けて負けられない戦いが続く。
金丸は9勝(3KO)6敗3分。04年に11月デビュー、05年の新人王戦は2回戦で敗退するも、翌06年の再挑戦ではSフェザー級西軍代表となり、全日本決勝でもあわやKO勝ちかと思わせる大健闘を見せた(引分敗者扱い)。07年に入ってからは中森宏[平仲BS]、吉澤裕規[ウォズ・引退]、岡田誠一[大橋]、川波武士[大鵬]と、強豪ランカーや大物ホープばかりの厳しいマッチメイクで引分を挟んで5連敗中。今回はまたも格上挑戦。06年11月以来、2年弱勝ち星が無い現状、何としても良い結果が欲しいところだ。
1R。ラウンド序盤は、様子見する山崎に対し、金丸が足使いつつ手数。中盤からは交互に前へ出てはワン・ツーという仕掛け合い。金丸がワン・ツーをヒットさせ、手数でもややリードするが微差。
2R。ミドルレンジ中心にゴツゴツという音が聞こえて来そうな打撃戦。山崎はジャブ少なく、いつになく強引な攻めは不発が多い。金丸の攻撃も山崎の堅固なガードに阻まれる事が多いが、冷静に右を狙い撃ちして貴重な有効打2発。
3R。金丸のペースに山崎が完全にハマっている。山崎が不用意に前に出るところ、金丸が右で狙い撃ち、山崎の反撃は不完全。ジャブとガードという山崎の二大兵器が機能不全になっている。
4R。今日の山崎はスピード感が乏しく、ガードも低く絶不調。金丸の右が淡々と有効打、ヒットする。金丸は足を使って遊ぶ余裕があり、山崎はラウンド終盤に左ボディを返すが単発に終わる。
5R。金丸はラウンド前半、マイペースで左右のフック、ストレートを有効打・ヒット連発。しかし後半、山崎は密着しつつ強引なボディ打ちで金丸を効かせて逆転。金丸も最後まで反撃して食い下がったが……。このラウンド、山崎が左目上をバッティングで受傷。
6R。ようやく左が出始めた山崎が主導権奪取。金丸も下がりながらヒットを返して食い下がるが、動きの端々に弱気が覗く。ラウンド終盤、再び金丸が攻勢に出るが、山崎の反撃の方が力強い。
7R。山崎の圧力に対し、金丸は細かく迎撃してヒット数でリード。山崎は連打少なく、攻勢がブツ切りになってしまう。ラウンド終盤、漸く手数が増えたが、金丸が有効打決めて逆転を阻止。
8R。金丸はアウトボクシングで手打ち気味ながらヒット連発して先制。だが山崎もしつこく距離を詰めて左ボディを有効打。一進一退の攻防が続いたが、金丸が最後に左フックをアゴに決めた。
9R。クロス〜ショートレンジの打撃戦。要所で連打、3連打を決めた金丸が一歩リード。ここで山崎の左目上の傷が悪化したという事でレフェリーストップ。
9Rまでの採点による公式判定は宮崎87-85、坂本87-86、野田87-87の2−0で金丸。駒木の採点は「A」88-83「B」89-86で金丸優勢。「B」判定のイーブンラウンドが半数の4つあり、点差以上に混沌とした内容と言う印象。
腰痛で絶不調の山崎、しかしそれを微妙に攻めあぐむ金丸……という内容で、勝敗だけでなく金丸の日本ランカー査定も委ねられた審判陣には頭の痛くなる採点だったろう。金丸批判票として(?)形勢微差のラウンドが山崎に流れるも、流石に勝敗までは覆せなかったか。あらゆる意味と思惑の入り乱れた形の公式判定と言える。
金丸が「大番狂わせ」と称して良い、殊勲の一勝。マイペースに格上を引きずりこみ、アウトボクシング気味の戦術も交えてポイントをガメた。手打ちのパンチやボディを打たれた時の効き方は、ランカーとしては頼りなさが残るが、それは次戦以降のこと。今日はこの快挙を心から喜んで欲しい。
山崎は試合棄権も考慮するほどの腰痛だった様子。なるほど、それを証明するような絶不調だった。動きが悪く、ガードも低く、ジャブも出ず、ではランカーの務めを果たせるはずも無い。一刻も早く故障を直して再起してもらいたい。