駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第1部第6試合・フライ級契約ウェイト(49.9kg)10回戦/○国重隆[大阪帝拳](判定3−0)金光佑治[六島]●

国重は18勝(2KO)3敗1分の戦績で、現在はWBCのLフライ級10位。00年にデビュー、翌01年に新人王戦にエントリーするも、緒戦で高山勝成[エディ(当時)]と当たる不運にも見舞われて敗退。だが、翌02年の再挑戦では全日本新人王タイトルを獲得している。その後は藤原工輔[正拳・引退]に不覚を取った以外は白星を重ねて日本1位のランクを長く保持し、そして昨年11月には中島健[Gツダ]との“OPBF挑戦者決定戦”と銘打たれた試合に勝利して中島から世界ランクも奪った。だが、タイトル挑戦権は何故か敗れた中島の方へ流れてしまうなど不遇を囲った。しかし07年6月に1試合挟んだ後、今年2月には嘉陽宗嗣[白井・具志堅]の保持する日本Lフライ級王座に挑戦(5R負傷判定引分)、6月にはエドガー・ソーサの保持するWBC世界Lフライ王座にも敵地で挑む(8RTKO負け)など、漸くタイトル戦線に進出した。今回は再起戦。これに勝てば来年早々に日本タイトルへの再挑戦が濃厚になる大事な一戦だ。
金光は11勝(6KO)1敗。Lフライ〜フライ級を主戦場とする選手だが、ミニマム級WBA世界10位、OPBF2位のランキングを保持している。03年デビュー。2連続KO勝利を挙げて翌04年の新人王戦にエントリーすると、3KOを含む破竹の4連勝で西日本決勝へ進出。奈須勇樹[Gツダ→角海老宝石]に敗れて準Vに終わり、その後約1年のブランクを経験するが、そこから現在5連勝中。07年7月には日本ランカーの松本博志[角海老宝石]を苦闘の負傷判定の末に降してランキングを奪取、今年3月には世界挑戦歴もあるエリベルト・ゲホン[比国]に判定勝ちして世界ランクも手中に収めた。
1R。国重はクロスレンジ嫌ってクリンチを多用する得意の戦術。左ストレート、フック、右フックでヒットを連発し完全に主導権を掌握。金光に何もさせず、足が揃った所をすかさず右で倒すノックダウンも。金光は全くダメージ無いが痛恨の2点ビハインド。
2R。金光の圧力を、国重はステップとクリンチで封殺しつつ左ストレートを効果的にヒット。主導権をガッチリ掴んで自在の攻守で絶好調。金光は空転する展開が続く。
3R。国重のステップとクリンチワークが絶好調。金光の圧力を手数に結びつかせず、後半からはヒット&アウェイで主導権を掴んで軽打中心にヒット量産。小差以上のリードを確保してポイントアウト。
4R。国重は金光の連打をダッキングとクリンチで封じ、マイペースで左ストレート中心のヒット稼ぎ。ラウンド後半にはアグレッシブな打ち合いに出て圧倒する場面も。世界戦での激戦経験が活きた、国重大差リードのラウンド。
5R。金光が圧力かけるが愚直過ぎか。国重はクロスレンジ乱打戦に持ち込んで互角以上の手数とアグレッシブ点で僅かにリード。金光は自分の採るべき戦法が見出せない。
6R。国重はアウトボックスでジャブを捨てながら左ストレート、右ボディを当て逃げ。ラウンド後半からは細かく足を使う上下への連打で、金光のお株を奪うコンビネーションを披露。
7R。金光の果敢なアタックが続くが、国重はクリンチに加えて的確なガードとダッキングで見事な捌き。アウトボクシングからの捨てジャブと左ストレートで攻勢点も譲らず。
8R。国重の軽打中心・捌きのボクシングがこのラウンドも機能。金光は何も出来ないままクリンチの中でもがくのみ。しかしラスト30秒、遂に運動量が多かった国重が失速。
9R。クロスレンジ乱打戦。金光がアグレッシブに手数でリード。国重は守備の時間が長いが、左ショート有効打で金光を一瞬グラつかせるなど見せ場も作る。形勢微妙なラウンド。
10R。国重は再び足を使うボクシングで手数先手。左ストレート→クリンチも駆使して主導権ガッチリ。クロスレンジでも打たれない頭の位置を確保して被弾せず、ヒット数大差で試合を締め括った。
公式判定は野田100-89、宮崎98-92、坂本97-93の3−0で国重。駒木の採点は「A」99-90「B」100-92で国重優勢。
国重のマスターピースと言える完全試合。クリンチ多いアウトボクシングがジャッジに多少嫌気されるも、内容的には文句なし。クリンチワーク、インサイドワークの限りを尽くして新鋭・金光の攻めを完封してみせた。左ストレート中心にポイントアウトに徹した攻撃スタイルも今日は完璧に近く、世界戦を経て一皮剥けた格好。
金光は相手のテクニックの前に持ち味を封殺され、攻略の手立てを見出せないまま10R終わってしまった様子。この経験を先にどう繋げるかだが。