駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第8試合・ライト級10回戦/○大沢宏晋[大星](判定3−0)佐梁孝志[明石]●

大沢は13勝(7KO)2敗3分で、現在は日本ライト級9位。04年デビュー、1勝無敗2分の戦績で臨んだ05年の新人王戦でライト級西日本新人王となるが、西軍代表戦では決定的な被弾の無いままスタミナ切れで力尽きる敗戦でリタイヤ。荒削りな所もあるファイター型からスピードと手堅い守備を前面に押し出したボクサー型に転向し、以後6連勝。07年5月には元日本ランカー・山岡靖昌[広島三栄]に勝利し、日本ランク入り。7月には小木曽研二[塚原京都]も降すも、12月にJRソリアーノ[比国]に敗れて東洋ランク入りを逃すと共に日本ランクからも陥落。しかし、今年2月に初の東京遠征で御舩シュート[セレス]に4RTKOで快勝しランキング復帰を果たすと、5月には元日本ランカー・高山剛志[ハラダ]に判定勝ち。前回9月の試合では、会田篤[ワタナベ]に敵地で辛い判定でドローに甘んじている。
佐梁は8勝(1KO)9敗1分の戦績。広島三栄ジムから00年にデビュー。新人王戦は2度挑戦するも西部日本予選で敗退。6回戦に上がってからは粟生隆寛[帝拳]や青空西田[新日本徳山]などホープの相手を務める“噛ませ”役に甘んじていたが、ジム移籍も挟みながらも2年半・6戦を費やしてB級脱出に漕ぎ着ける。A級でも昇格緒戦で玉越強平[千里馬神戸]と当てられるなど厳しいマッチメイクで戦績を崩したが、07年7月の岩下幸右[Gツダ]に判定勝ち、11月にも竹下寛刀[高砂]に分の良いドロー、今年5月には片山博司[アポロ]に判定勝ちと、揉まれて身に付けた粘り強さが戦績に繋がり始めている。
1R。大沢はスピード優位を利して、足を使いつつのジャブ、ワン・ツー中心。上下左右の打ち分けもスムーズで手数豊富だが、ガード上や不完全なヒットが多い。佐梁は強引にアッパー、フックで迫力ある反撃だが単発で強引過ぎる。
2R。やや距離詰まって佐梁の土俵。大沢も左中心に上下へヒットを決めるが、佐梁の直線的な攻めを捌けず、圧力と手数をモロに浴びる場面も。
3R。大沢は横の足とジャブが増えて復調。サイドに回りこんでの右、ジャブ無しの右ストレート、左ボディと多彩な攻めでヒット数リード。ラウンド中盤には佐梁も圧力攻めで対抗したが、終盤には再び大沢が巻き返してパンチ数で大差。
4R。やや膠着気味の展開も、離れてしまえば大沢のペースに。密着しても右ストレートにボディで手数とヒットを稼ぐ。佐梁は頭低くして強引に突進するが泥仕合に持ち込むのがやっとで戦果は挙がらない。
5R。このラウンドも膠着気味。佐梁の強引な圧力攻めが一旦主導権を引き寄せるが、大沢も上下に右ストレート、左フックを捻じ込んでヤマ場を作る。大沢はサイドからテンプルを狙う得意の攻めに持ち込みたいが、やや焦っているのか正面から精度の粗い右に走りがち。
6R。頭から突っ込む佐梁に対し、大沢は迎撃で細かくヒットを稼ぐ。但し全体的には膠着気味で決め手に乏しい展開に終始。大沢はもっとスピードを活かしたい。
7R。更に強引、苦し紛れとも言える突進に走る佐梁に対し、大沢は少々粗い右ショート中心の迎撃で対抗。佐梁の攻めに力強さが無くなり、偶然のバッティングで負った右目上の傷も状態が良くない。クリンチで大沢の攻めを封殺するが、ポイントは奪えない。
8R。佐梁の強引なペース。クリンチ続けるが、大沢は強引に右アッパーでクリーンヒットを奪い、佐梁の鼻を大出血に追い込む。佐梁のパンチは大振りフック中心で、大沢は冷静に狙い打ってリードを確保する。
9R。同様の展開。大沢はクリンチを振り切って右中心にヒット集める。佐梁も粘るが、粘るだけという感じ。ただ、大沢の攻めは焦りも見え隠れ。クリーンヒットを狙い打つ間と余裕が欲しい。
10R。このラウンドも膠着。佐梁の粘りに手こずる大沢だが、アッパー、右ショートなどでクリーンヒットを連発。ラウンド終盤にもヒット数で大差広げるが、KOに繋がるシーンは無く、もどかしさの残る内容に終わった。
公式判定は半田100-91、野田99-92、宮崎98-93の3−0で大沢。駒木の採点は「A」「B」いずれも99-91で大沢優勢。
大沢が相手の渋太い圧力攻めに苦しんだが、明確なヒット数大差をつけて完勝。とはいえ、ブルファイターの突進とインファイトでの対処に課題が残った。横のステップと左ジャブ、右ストレートという武器をもっと効果的に活かす試合運びを磨いてもらいたい。
佐梁は彼なりのファイトスタイルを貫いた。密着しては手数、という愚直な戦い振りで粘ったが、「パンチを当てる」という根本的な所で技術差を見せ付けられた。勢いと粘りだけでどうにかなる相手ではなかったという事だろう。