駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

今や日本ボクシング界の至宝となった長谷川穂積、西日本地区所属選手でありながら東都での防衛戦が多い現状だが、約2年ぶりに地元・神戸での凱旋興行が実現した。しかも会場は真正ジムの間近にある大会場・ワールド記念ホール。今回がジム創立以来初の大箱興行だけに、関係者諸氏の感慨もひとしおだろう。そして、興行へ向けての意気込みがストレートに集客に反映されたのか、メインが始まる頃には2階席の一部を残して超満員の大盛況となった。「交通の便が悪い・キャパが必要以上に大きい・設計上観辛い席が多い」という三重苦の会場でこの快挙は見事と言っていい。戴冠から4年、話題性では他の王者の先行を許す事もあるが、その名前と実力は確実に浸透して来ている。
さて、長谷川の出場する世界タイトル戦、8度目の防衛戦の相手は指名挑戦者ブシ・マリンガ。情報の乏しい南アフリカ在住の選手で、かのウィラポン・ナコンルアンプロモーションをTKOに降して指名挑戦者の座を射止めた新進気鋭の存在。実力的には未知数な部分が多いが、長谷川が自他共に認める苦手なサウスポータイプという事もあり、注目されている。
セミには、真正ジムから元世界王者・高山勝成が登場。比国ランカー相手のチューンナップ試合ながら、世界戦興行らしい豪華な共演である。予備カード2試合を含めて全7試合計50R。平日の夜興行とすれば、ギリギリ一杯のボリューム。満場の観客をどう愉しませるか、一流世界王者の腕が問われる一夜だ。


※駒木の手元の採点は「A」(10-9マスト)「B」(微差のRは10-10を積極的に採用)を併記します。「B」採点はラウンドマスト法の誤差を測るための試験的なものですので参考記録程度の認識でお願いします。公式ジャッジの基準は「A」と「B」の中間程度だとお考え下さい。

第3試合・Sライト級契約ウェイト(62.0kg)8回戦/△鮫島康治[Gツダ](判定1−1)土居裕介[塚原京都]△

鮫島は2Rにホールディングで減点1。
好機判定は半田79-75(鮫島支持)、大黒77-75(土居支持)、原田76-76の三者三様ドロー。駒木の採点は「A」76-75「B」78-77で鮫島優勢。最初から最後まで膠着した大混戦。採点困難なラウンドが続き、ドロー近辺で判定が割れるのも当然というべき試合だが、半田副審の「減点以外鮫島フルマーク」というのは、明確なクリーンヒットを重視する半田副審の採点傾向を鑑みても疑問符が付く。

興行全体の総括

前座は凡戦気味の試合も見受けられ、会場にも弛緩した空気が漂い始めていたが、そこは長谷川穂積。濃密な157秒でチケット代の元を取らせる見事な3ノックダウン劇を見せてくれた。3度目の指名試合をクリア、直近3度の防衛戦が2R以内のKO勝利と、その才能を評価するには僅か1本のベルトでは収まらない所まで来ていると断言していいだろう。統一戦、あるいは2階級制覇、いずれにしろ日テレからWOWOWに“移籍”すべき時に来ている。この全盛期を逃さず、世界展開へと踏み出してもらいたい。日本最強のマネージメント・プロモートを受けている強みを活かして欲しい。
前座では、安定した地力とB級では破格のパンチ力を遺憾なく発揮した福岡を特記。ここからが正念場だが、とりあえずランカーを目標に頑張って欲しい。新人王戦前に強行出場の松本は、決定力の強化が必須課題だろう。