駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第8試合・フライ級10回戦/○亀田興毅(2R 59秒 KO)ノパデッチレック・チュワタナ●

亀田3兄弟長男の亀田興毅は6回戦デビュー以来、4勝(3KO)無敗の戦績。しかしこれまでの相手は階級が下のタイ人ノーランカーが中心で、しかも日本人相手に軽くKO負けされた“実績”のある選手ばかりだった。今回、初のタイ人ランカー相手にどれほどの強さを見せつける事が出来るかが、今後の展開をも占う鍵となろう。対戦相手のノパデッチレックは現在タイのフライ級2位だが戦績は3勝(2KO)2敗で、これが初来日となる。
テレビ中継も入って、入場シーンは結構な照明効果を使った大掛かりなもの。グレイシートレインならぬ“亀田トレイン”で父親、弟と共に入場。しかし会場からは「亀田」コールどころか手拍子すら起こらない(普通は身内を動員してでも盛り上げるだろうに)。いかに亀田の人気がマスコミによって作られたものであるかが、このシーンだけを見てもよく分かる。
1R。ノパレッチデックは予想通りの“噛ませモード”。時々申し訳程度に防御される事を前提にした大振りのフックやワン・ツーを放つばかり。よって見所は亀田の攻めっぷりのみと言う事になるのだが、見た印象を列記していくと、まず1発、1発のハンドスピードはある。威力もとびきり強いとまでは言えないが悪くは無い。しかし全ての攻撃が単発気味で、それも肩の動きがテレフォンパンチに近いような気もする。前の試合で「ジャブが少ない」と言われたのを意識してか、ラウンド序盤には意識的にジャブ中心の組み立てをしていたものの、1分半を過ぎた辺りからはそれも殆ど見られなくなってしまった。ステップはベタ足気味で、これは明らかに軽快さに欠ける感じ。ランカー以上に出世する際に重要になって来るであろう横の足も殆ど使えていない。ディフェンスは評判通りにほぼガード一辺倒。“噛ませモード”の選手が放つようなパンチに対しては全く被弾を許さなかったが、これが果たして日本人ランカークラスに通用するかどうかは全くの未知数。
2R。開始早々、亀田のボディブローがクリーンヒットし、痛みに耐えかねるような感じでノパレッチデックは崩折れるようなダウン。ロクにファイティングポーズも取らないままカウント9でレフェリーが半ば無理矢理試合を続行させると、亀田が無抵抗の相手にラッシュを浴びせていって、ノパレッチデックは試合放棄をするように2度目のダウン、10カウントが数えられた。
勝った亀田は4つ目のKO勝ちで5勝目。ただし、戦意の乏しい噛ませ犬相手にいくら勝ち星を重ねても、それ自体に値打ちは全く見出せない。亀田が真に評価されるのは、本気で彼の首を獲りに来るアグレッシブな日本人選手を返り討ちにした時だろう。
亀田の現時点の実力(ただしオフェンス限定)は、将来の日本ランク入り有望な8回戦ボクサーといったところか。これが4回戦ボーイなら「こりゃ強い」と大いに驚く。新人王に出て来たとしたら「全国はともかく、西日本か西軍代表までなら狙いに行ける」と言うだろう。しかし日本人ランカー(今日のセミ中島健みたいなのは別だが)以上が相手なら、散発的なパンチをウィービングされ、逆に連打をガードの上からででも被弾して、ペースを握れないまま延々と翻弄されそうな気がする。ましてやポンサクレックなんかとやった日には「どうぞ、この馬鹿なアンチャンを撲殺して下さい」と生贄を差し出すようなものだろう。幸い(?)早急な世界挑戦は断念した模様だが、現状においてこの程度の選手が、つい最近まで「世界」を口にしていたのかと思うと口から飯粒を噴出したくなる思いだし、それをクソ真面目に大きく採り上げている商業主義偏重のスポーツマスコミ諸氏には猛省を促したい。