駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第6試合・スーパーウェルター級4回戦/○五十嵐正志(4R2分49秒TKO)坂上岳郎

最後は両者これがデビュー戦というフレッシュなマッチメイク。今回は進行上の「最終試合」だが、いずれはこの後楽園ホールの「メインイベント」で興行の最後を飾る存在になって欲しいと、ただただ素直に思う。ともあれ、この日この場所このシチュエーションでデビューを迎えた2人にとっては一生の思い出になった事だろう。あとはこれで客席が埋まっていれば……。
1R。五十嵐がゴング直後からアグレッシブ。ワン・ツーを主体に顔面へのフック、ボディへのアッパーも交えて優勢。よく練習しているのだろう、デビュー戦でこれだけ基本に忠実な攻めが出来る選手はそんなにいない。というか、今年のレベルならミドル級の新人王で西軍代表が狙えるかもしれないテクニックだ。ここは東京だけど(笑)。ただ、守備面には若干の課題があって、一通り連打を放った後に頭を振る、ダッキングするという基本事項が不徹底。一方の坂上だが、デビュー戦で完全に主導権を握られては苦しい。劣勢をクリンチで逃れるのが精一杯で、なかなか手が出せない。
2R。ガードの低い坂上を五十嵐がワン・ツー、ボディブローと自在に攻める。ただ早くもスタミナ切れか、ラウンド中盤で息が上がってしまう。それでも終了寸前ににワン・ツーでダウンを奪う。坂上がカウント9でファイティングポーズを取った所でゴング。
3R。このラウンドも技術面で明らかに勝る五十嵐の猛攻が続く。しかしまたも1分過ぎにはバテバテで、疎かになっている守備の甘さを突かれて坂上の反撃を許す。結果的にヒット数は際どくなったが、しかし印象度では以前五十嵐だろう。
4R。スタミナを欠き精彩を欠く五十嵐に対し、イチかバチかのKO狙いで死力を振り絞る坂上がこのラウンドは中間距離での打ち合いでやや優勢に立つ。しかしラウンド終盤、五十嵐渾身の一撃をクリーンヒットされてグラつくと、勝負ありと見たレフェリーが試合を止めた。
「これぞ4回戦!」と言いたくなるような気持ちの良い試合。この日は消化不良の試合が多かっただけに、こういう試合で後味が良いまま帰途につけるのは有り難い。この試合の前に帰っちゃった人、損したね。
勝った五十嵐はもっとスタミナをつけて、ディフェンスをもうちょっと練習すれば来年度以降の新人王戦では楽しめそうな素材だ。負けて坂上は自分のやりたい事の半分も出来ていないだろうが、それでも最終ラウンドに負けん気の強さだけは確認出来た。これに懲りず、いつかもっと客の多い時にリベンジするくらいの気持ちで精進・研鑚に励んで欲しい。