駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第8試合・フライ級契約ウェイト(49.4kg)10回戦/○フランシスコ・ロサス(判定2−1)戎岡淳一●

メキシコから来日のロサスは、現在WBCライトフライ級11位。元・WBC中米王者の経歴があり、ここまで14戦(10KO)4敗1分の成績。
対する戎岡は、現在日本ライトフライ級5位。まだタイトル戦線に絡んだ事は無いものの、昨年5月には、元日本王者の興梠貴之を相手に、劣勢の中から逆転TKO勝ちを果たしている。ここまでの戦績は12勝(4KO)7敗2分。
1R。両者様子見中心で、相手の体に触れない牽制パンチを繰り返す。終盤、ロサスが戎岡のガードの上から数発パンチを浴びせたのが、ほぼ唯一のコンタクト。他にボディへの一撃もあったが、これはローブローで、原田レフェリーは“減点材料”を見つけたとばかり、「注意1回目」のポーズ。2回目か3回目で減点する気だなと、恐らく会場中の関西ボクシングマニアは全員同じ事を考えたはずである(笑)。
2R。中間距離でフェイントを多用する、これまたお互いに手数の少ないラウンド。それでも、アグレッシブさではロサスが上で、ガードの上からとは言え印象的な攻撃を加えていった。しかし戎岡も数少ないパンチのうち右フック1発が小気味よい音を立ててロサスの顔面を打ち抜き、ジャッジ的には際どいラウンドに。
3R。ロサスはジャブを使わず、強打を振り回す強引な攻め。戎岡を圧力でコーナーに追い詰め、ボディブローを連打してゆく。一方の戎岡はジャブも強打も少なくて、いかにも消極的に映る戦い振り。
4R。互いに決定打の無い淡々とした展開ながら、ロサスが確実に手数の差で優位に立つ。戎岡はジャブすらロクに出さず、不可解な姿勢が目立つ。終盤、両者がもつれあって、ロサスが尻餅をつくが、これはスリップという判断。戎岡陣営が「ダウンだ」と猛烈にアピールしたが、判定は覆らず。あと、ラウンド終了直前に戎岡が無意味に挑発的なポーズをとったのには呆れ返った。挑発する前にパンチを打たんかい!
5R。このラウンドになって、ようやく戎岡が積極的になり、立て続けに3発ヒットを奪う。が、そこからロサスが反撃に転じると、せっかく掴みかけた主導権は戎岡の手から滑り落ち、再び戦況は混沌。そんな中、ロサスがボディブローを放つと、すかさず原田レフェリーがローブローを指摘し、ロサスに減点1を宣告。明らかにローブローだったのは1Rの1回目しか無かったはずだが、この辺は最早芸能の領域。
6R。ロサスが序盤から戎岡をロープ際に詰めて上下に加撃。戎岡は、また手が出なくなって防戦一方。ロサスに決定力が無いのだけが救いだ。
7R。戎岡は相変わらずロクにジャブすら打たない消極的に過ぎるファイト。ロサスがラウンド中盤から攻勢に出て、ロープを背負わせてワン・ツーを浴びせる。ゴング寸前になって、ようやく戎岡がロープ際から逆襲に転じるも、果たしてどこまで挽回出来たか。
8R。戎岡にようやく手数が出始めた。ワン・ツー中心の攻めで、このラウンドは手数の上で互角。ロサスの雑な攻めにも助けられて、細かいヒットを時間帯を限らずまんべんなく奪っていった。
9R。戎岡がこの試合通じて初めて先手を取って攻めていった。ロサスの強引なガード上からのパンチにバランスを崩されるシーンもあったが、ラウンド後半に上手く手数をまとめてヒット数で優勢に。
10R。ロサスがフック、アッパー中心の強引なファイトでペースを奪い返す。戎岡もワン・ツー中心に追撃を試みるが決定打が無く、ズルズルとロサスペースのまま試合終了のゴングが鳴らされた。
例によって、やたらと時間のかかる採点集計。試合途中にゾロゾロと帰途に着く客が続出するという、緊張感に欠けた冗長な試合だったが、この集計タイムだけは不本意ながらハラハラさせられた。そして発表された公式採点は、上中98-91、宮崎96-93(以上2者ロサス支持)、北村96-94(戎岡支持)。まるで東洋太平洋タイトルマッチのような偏りまくった採点だったが、名古屋とは一味違う判定となって、ただただ安堵の一言。ちなみに、駒木の採点では96-93でロサス優勢と見た。
ロサス陣営は勝利を告げられるや、まるでベルトを獲ったかのようなハシャギっぷり。まぁ気持ちは分からないでもない。確かにある意味、タイトルマッチに勝つよりも難しい事を成し遂げたのだから。
一方、お手盛りのチャンスをみすみすフイにしてしまった戎岡だが、今日の戦い振りでは同情の余地は一片も無い。むしろリードジャブもロクに使えないような世界ランカーが粗製濫造されなくて良かったとすら思える程だ。今一度、イチからのやり直しを切に希望する。