駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第7試合・バンタム級10回戦/●村井勇希(9R 2分27秒 負傷判定0−3)福山登○

村井は現在日本Sフライ級8位で、9勝(3KO)5敗4分の戦績。2戦前、昨年8月に世界ランカー相手に引き分けた試合を観戦したが、点数的には1〜2ラウンド分地元の利があったような内容だった。
福山は15勝(12KO)5敗1分の戦績で、現在はノーランカーながら、かつてはバンタム級1位まで上り詰め、当時の王者・仲宣明に挑戦した経験もある。この試合を機に再びランク入りを目指したいところだ。
1R。ボクサーとファイターの対戦とあって、静かながら激しい自分の距離の奪い合いが展開された。インファイトを望む福山がにじり寄ると、村井は足を使ってロングレンジへ離脱する…の繰り返し。ただ、攻勢に出ている分だけ福山のペースで、一度は福山の強打が村井のアゴを掠めるシーンも。なお、このラウンドで福山は剃り上げた額をバッティングで深く切ってしまった。
2R。両者共にパンチの当たる距離からジャブ、ワン・ツー、それにフックを絡めて一進一退の攻防戦。序盤と終盤を自分の時間帯とした福山に対し、村井もラウンド中盤にはパンチをまとめて応戦。甲乙付けがたい互角の戦い。
3R。福山の猛攻を村井がボディワークで交わし、隙を突いてジャブを狙い打つ。手数そのものは福山が勝っていたが、当たるパンチを殆ど打てておらず、ジャッジ的には際どいところ。
4R。福山がラウンド序盤に右ストレートをクリーンヒット。これで試合の流れは一気に福山へ傾き、接近戦で執拗なボディ攻撃を浴びせて村井の動きを止めてしまう。当然、村井も反撃を試みたが、パンチの殆どは福山に捌かれてしまった。
5R。このラウンドも福山は接近戦に持ち込んでボディアッパーを連発、次々とクリーンヒット、有効打を奪っていった。足を止められた村井も開き直ってインファイトに打って出るも、これは餅を餅屋以外の店が売った感じ。
6R。超接近戦で福山が猛攻。村井は体を「く」の字に折り曲げて苦しむ場面が目立つ。時折、自分の距離からボクシングをしようとするのだが、ボディ攻めで足がすっかり鈍くなっている。
7R。福山が体を密着させてショートパンチを打ち込むシーンが目立つ。ボディアッパーと顔面へのショートフックがクリーンヒット。村井も裂帛の気合もろとも猛ラッシュを2度仕掛けたものの、強振している分だけ精度が甘い。
8R。前のラウンドと同じような展開に終始。村井はこのラウンドもハンドスピードのあるラッシュを仕掛けていくが、福山のパンチに上手く相殺されてしまい、なかなか有効打が奪えない。それでもラウンド終盤にはヒットを奪うシーンも見られ、ジャッジ的には少差のラウンドとなった。
9R。ラウンド開始直後から福山の一方的な展開になった。村井の強打は見せ場を作ったのみで、明らかに敗色濃厚の気配。ところがここで福山の額の傷が大きく開いてしまい、リングドクターが試合をストップ。怪我の原因が偶然のバッティングのため、勝敗の行方は9ラウンドも含めての判定に持ち越された。
そして公式判定の結果は、88-83、88-83、87-84の3−0で福山の勝利。駒木の採点では、89-83でやはり福山の勝ち。
福山が実績上位であるところを見せ付けた完勝劇。1階級下の下位ランカー相手に負けられないといったところか。これで久々の日本ランク獲得が濃厚となったが、本人は試合後のインタビューでタイトル戦線への復帰を熱くアピールした。サーシャや鳥海と比べると厳しい部分もあるだろうが、とにかく今日は立派な戦いっぷりだった。
一方、敗れた村井だが、実は腰を痛めて練習不足だったとのこと。しかし今日の試合内容は、それも大きな言い訳にならないような負け方だった。