駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第6試合・バンタム級6回戦/○健文トーレス(6R 0分33秒 TKO)藤本弘明●

健文トーレスは、メキシコの元世界王者・ヘルマン=トーレスを父に持つ日系2世。アマチュアでは21戦20勝19RSCの戦績を残し、03年の全日本実業団選手権バンタム級を優勝の実績を持つ。プロ戦績はここまで1勝(1KO)1敗で、敗戦はメキシコで格上相手(ウィラポンに挑戦経験のある元世界ランカー)に戦ったデビュー戦、勝利は昨年末にタイ人を1R秒殺したもの。今回が始めて同ランクの相手という事になる。
一方の藤本は、ここまで5勝(3KO)2敗1分の戦績。ただ、6回戦では1敗1分で、勝利は全て4回戦でのもの。今回が昨年7月以来半年振りのリング。
1R。トーレスはやや動きが堅く、手数が少ない。連打を放つ時のスピードと迫力は十分感じられるが、やや雑な印象も。かたや藤本は極端にガードを下げて、ボディワークに頼る“ディフェンス・マスター”スタイル。確かにウィービングには見所があるが、ショートレンジの攻防で体をヒネって攻めを交わそうとした所へ痛打を浴びせられ、マットにひっくり返された。派手な倒れ方の割にダメージは小さかったが、ファイトスタイルの理想と現実が対応していない感がある。
2R。トーレスは、リードジャブにスピードが無く、これを藤本に捌かれてなかなかペースが掴めない。対する藤本も、守備から攻めへの連繋が今一つで、終盤には手数も無くなってアピールに欠けた。
3R。藤本がトーレスのアグレッシブな攻めをことごとく去なすが、専守防衛気味。被弾は避けても手数の差は如何ともし難く、ジャッジの上では少差ながら劣勢。
4R。藤本はスタミナ切れか、徐々にトーレスのパンチを顔面に浴びるシーンが目立って来た。藤本も応戦しようと手を出すが、出て来た所を逆にパンチを合わされて無効化される。トーレスはフックとアッパーのコンビネーションが得意なようで、これを再三効果的に使っていた。
5R。試合当初の軽快さが消え失せ、“ただのガードの低い人”になってしまった藤本に、トーレスが絶妙の距離感で照準を定めて有効打を連発。トーレスは首から上を使ったディフェンスが達者で、この部分は並の6回戦ではない。
6R。トーレスは、バテてすっかり精彩を欠いた藤本を一気にコーナーへ詰めてボディを連打し、速攻でダウンを奪う。疲労困憊といった感じで藤本が立ち上がるも、トーレスはすかさずロープへ詰めてボディへ連打、連打。最後は藤本が力尽きるように崩れ落ち、レフェリーが試合を止めた。
トーレスは2連続KO勝ちでA級昇格を決めた。陣営は「年内に日本ランカー、来年夏にはタイトルマッチを」と意気軒昂だが、今日の試合振りを見る限りでは早急な格上挑戦は時期尚早のような気もする。連打のスピード、ディフェンス勘、距離感など、確かに一流の素質も持ってはいるが、総合的に見れば並の8回戦クラス。特にリードジャブが鈍くて試合の流れを自分から作れないのは痛い。とはいえ、まだ17歳。今は足元を固め、地道に良い経験を積んでいってもらいたい。話題先行で沼地にハマるのは、どこかのタイ人専門の日本ランカーだけで十分だ。
敗れた藤本は3敗目。所属ジムがつけたニックネーム“必殺遊び人”をそのまま体現したような戦い振りだった。強くなりたいなら、そんな悪ふざけなニックネームを返上する心構えで、もっとマトモにボクシングと向き合って欲しい。