駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第5試合・日本ミニマム級タイトルマッチ10回戦/○《王者》小熊坂諭(判定3−0)三澤照夫《挑戦者・WBC同級10位・WBA同級15位》●

世界ランカーか日本ランク最上位者を挑戦者に迎えるチャンピオンカーニバルミニマム級は王者・小熊坂が世界ランカーの三澤を相手に5回目の防衛戦を行う。
チャンピオンの小熊坂は21勝(9KO)6敗3分の戦績で、現在WBC5位、WBA7位の世界ランカーでもある。トリッキーなファイトスタイルとイーグル京和に惨敗したWBC世界戦の醜態のためにイメージが悪いが、“負けない王者”というキャラクターは、プロ格闘技界に必要不可欠なアクセントでもあるはずだ。
一方、挑戦者の三澤は14勝(6KO)1敗3分の戦績。これが初のタイトルマッチだが、これまでの対戦相手が全員日本人というあたりが、京阪神在住のボクシングファンとしては非常に新鮮(笑)。
1R。静かな立ち上がりだが、三澤がワン・ツーを先手で繰り出して主導権を窺う。一見して強引なのにハンドスピードもあり、一筋縄ではいかないパンチを打つ選手だ。一方の小熊坂、2分過ぎまで完全に様子見モード。さすがに有効打は防いだが、軽くジャブを2発ほど貰ってしまい、これがジャッジにどこまで影響するか。
2R。両者手数少なく、消極的な互角の形勢。終盤に小熊坂がワン・ツーをヒットさせ、これがこのラウンド唯一の有効打。小熊坂はこの辺、ポイントの奪い方が実にしたたか。
3R。互いの攻めをボディワークで捌きあうディフェンシブな展開。三澤が小熊坂をコーナーに詰めるシーンが目立ち、やや積極的に映る。ゴング寸前、三澤の右が小熊坂の顔面を捕らえ、これはジャッジに良いアピール。
4R。三澤がワン・ツーの当たる距離を掴んだ印象で、ヒットを2発3発と重ねてゆく。小熊坂は持ち味の大きなパンチに活路を求めるが、ダッキングで回避された。後半は小熊坂が守備で見せたが、攻撃との連繋が拙い。
5R。両者がお互いの攻撃をダッキングや強引なクリンチで完封する、極めて守備的な膠着戦。ヒットらしいヒットはラウンド通じて皆無で、差の付ける材料が見出し難い。
6R。このラウンドも中盤までは互いに有効打全く無し(小熊坂のローブローが1発あったが)。終盤、ラッキーパンチ気味に三澤が1発当てると、主導権は挑戦者側に流れた。ゴング寸前にはワン・ツーが王者を捉える場面も。
7R。前半は小熊坂がジェネラルシップを握るも、ボディブローがローブロー扱いになる不運。後半になると、三澤が1発ヒットを奪って更に追い討ちを掛けたが、小熊坂もロープに詰められながら反撃し、ポイントを手放さない。
8R。両者、敵の適性距離をスカしあうため、なかなかパンチが噛み合わない。小熊坂がボディブローを浴びせるが、これがまたもローブローの警告。減点を恐れて消極的になった小熊坂に三澤がプレッシャーを掛け、ジェネラルシップを握った印象。
9R。このラウンドもディフェンシブ過ぎて膠着気味。1発判りやすい有効打を奪った三澤がポイントを獲り切るかと思われたが、2分過ぎ、コーナーに詰められた小熊坂がワン・ツー気味に左右の連打を放つと、これが三澤の顔面にクリーンヒット。これでバランスを崩した三澤、尻餅を突いて痛恨のダウン。試合再開後、三澤もクリーンヒットを奪ったが、ダウン1回の差は覆せず。結果的にこのダウンが勝敗を分けた。
10R。最後の最後で小熊坂に積極性が見えた。明確な有効打こそ見られなかったが、三澤をロープに詰めて印象的なラッシュで主導権をアピールする。三澤も前ラウンドの失点を挽回しようと最後まで粘ったが、小熊坂の高い守備力の前に攻め手はことごとく阻まれた。
公式判定は96-94、96-94、95-94の3−0で小熊坂の辛勝。駒木の採点では96-95で小熊坂。5回目の防衛を果たした小熊坂だが、見栄えのしない「かろうじて」という勝ち方だったため、防衛記念インタビューでも王者の口から景気の良い話は語られず。三澤のキレのある攻撃を見事に防ぎきったディフェンス能力の高さは、さすが“負けない王者”の真骨頂という感があったが、これに確実かつ強力な攻撃力が結び付かなければ、念願の世界奪取までの道程は長いものになるだろう。