駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第9試合・フェザー級10回戦/●上原誠[ハラダ](負傷判定8R0分38秒 0−2)ガマリエル・ディアス[墨国(メキシコ)]○

メインイベントは、ハラダジム唯一の日本ランカー・上原が世界ランク奪取を狙うチャレンジマッチ。
その上原は現在日本フェザー級6位。03年にフィリピン王者・ジェフリー・オニャテを判定で下してランキング入り。その後はノーランカー相手に3戦をこなして来たが、今回が一気の相手強化で正念場となる。ここまで戦績は11勝(6KO)6敗3分。
対するディアスは、現在WBC中米カリブ王者で世界ランクは9位。5月にも来日し、当時Sバンタム級の日本ランカーだった藤原直人を一方的な試合展開で9RTKOに沈めている。戦績は22勝(10KO)5敗2分。
1R。序盤からガマリエルのジャブ、そしてボディへのストレートがビシビシ決まる。上原は一連の攻撃に全く反応できず、ガードの隙間から痛烈な被弾を重ねる。逆に上原が仕掛けたコンビネーションやフックの連打は、ディアスに余裕を持ってかわされる。最初の3分間で、早くも歴然たる実力の差が浮き彫りになってしまった。
2R。ディアスが圧倒的な実力差を見せつける。ジャブ、ストレート、左ボディ、顔面へのアッパーといった多彩な攻撃が上原を次々と襲う。上原も懸命に反撃を試みるが、ガードの上を叩くのがやっと。
3R。正攻法では敵わぬと見たか、上原がクリンチ気味に体を浴びせて強引に仕掛けていくが、有効打には至らず。ディアスは接近戦はやり辛そうにしていたが、一度中間距離に立つと重さのあるジャブで上原を遊んでしまう。
4R。ディアスが細かく巧みなステップワークで自分の距離を手放さない。そして淡々とジャブ、ストレートを有効打にして優勢を築く。上原はまたも接近戦を挑んでいくが、逆にアッパーを喰らうわ、クリンチで逃げられるわで、自分の思うような試合が全く出来ていない。
5R。上原が強引に接近戦を仕掛けるところを、ディアスがその都度クリンチで逃げて膠着させる。上原は粘り強く戦って、左を出会い頭気味にヒットして漸く優勢に持ち込んだが、終盤にはディアスに中間距離を許して反撃を浴び、ジャッジを微妙なものとしてしまう。なお、このラウンドの膠着戦で起こったバッティングにより、上原は目尻にかなり大きな傷を負ってしまう。
6R。ディアスは上原の目尻の傷を狙ってワン・ツー、左右のフックを浴びせる老獪な戦い振りで圧倒。上原は左ストレート1発をクリーンヒットさせたものの後が続かず、接近戦を挑んでは傷口を苛められる辛い展開。
7R。上原の悲壮な戦いが続く。単発で左ストレート2発クリーンヒットさせたが、ペースは完全にディアスのもの。何発ものジャブ、ストレートが上原の傷口を襲う。
8R。ラウンド開始直後からガマリエルが一方的にワン・ツーをクリーンヒットさせてゆくと、レフェリーがリングドクターに目尻の傷のチェックを要請。これは事実上がレフェリーストップとなり、勝敗は既に結果が明白な──公平なジャッジを心掛ければ、だが──負傷判定に持ち込まれた。
公式判定は安田79-74、大黒79-74とこれは妥当なジャッジだったが、残る藤田の採点はなんと76-76のイーブン。幸いにも2−0でディアスに勝ち星が与えられたが、どう見ても常軌を逸した地元判定であった。こんな採点が許されれば、どんな試合内容でも勝敗がジャッジによってコントロール出来る事になってしまう。地元判定が悪であるのは明らかな事実だが、今回の藤田氏のジャッジはその悪の中でも更にタチの悪い物であったと言わざるを得ない。ボクシングコミッションは事情聴取の上、資格停止処分等のペナルティを検討すべきであろう。(蛇足だが、駒木の採点は79-73でディアス)