駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第8試合・Sライト級8回戦/●高山剛[ハラダ](判定0−2)磯道鉄平[ウォズ]○

セミファイナルは挑む方が階級を上げるという、逆ハンデのランキング争奪戦。
高山は03年度Sフェザー級西日本新人王1位(準優勝)で、現在はライト級を中心に戦っている。戦績は9勝(3KO)4敗で、昨年11月に三浦誉士に判定負けして以来の対ランカー戦。
一方の磯道は9勝(7KO)とデビュー以来全勝のサウスポー。04年のSライト級全日本新人王で、その時に獲得した日本10位のランキングを今も守っている。ランカーとしてはこれが4月に続いて2戦目で、今回が初の8回戦。
1R。磯道は以前から相手の攻撃に反応する能力が高過ぎて反射的に真っ直ぐ後退してしまう癖があるのだが、今回は横の足も随分使えるようになっていた。これは大きな進歩。
このラウンド、様子見ムードの静かな立ち上がりだったが、磯道は高山の攻撃をスカしてジャブ、ストレートを時折当てていき、僅かな優勢を築いたか。
2R。高山が先制攻撃、磯道それをかわして反撃……という構図の攻防戦。ただ、このラウンドは高山のパンチが不完全ながらヒット。磯道も的確に軽いヒットを奪うが、手数劣勢でジャッジは微妙。
3R。磯道が高山の動きを見切りだした。軽快に足を使って高山のペースを乱しておいて、右ジャブやいきなりの左ストレートで再三のヒットを奪う。高山も主導権を失いながらもカスり気味のヒットを数発決めたが……。
4R。このラウンドも序盤は完全に磯道ペース。しかし、このまま状況が推移するかと思われた矢先、高山が磯道をコーナーに誘導して逃げ場を封じ、速い回転のコンビネーションで続けざまにヒットを奪う。終盤にも同じようなコーナーでのラッシュを決め、形勢はガラリと逆転。磯道も左ストレートをクリーンヒットさせてはいるが、今日の磯道の攻撃は単発気味でインパクトに欠ける。
5R。磯道は徹底したヒット&アウェイ戦法。横の足を使って細かくヒットを奪っていく。しかし高山も磯道をロープ際に詰めて強打を浴びせる場面もあって、ほぼ互角の展開。
6R。目に見えて磯道のコンディションが悪い。攻めは相変わらず単発気味で手数に乏しく、その単発攻撃もいつもの威力が感じられず軽い。ラウンド通じてのヒット数は両者互角ながら、高山の方がコンビネーションを使って一気に畳み掛ける場面がある分だけアグレッシブの点で優勢か。
7R。高山が近い距離でジャブ、ストレートを中心にヒットを集める。磯道はパーリングを駆使してダメージの残る被弾は避けているが、やはり攻撃が散発気味で手数が出ない。
8R。序盤、高山がストレート連打で磯道を逃げ場の無い所に追い込み、強烈なクリーンヒットを決めて圧倒的優位に立つ。ところが磯道がここから最後の力を振り絞って奮起。これまで影を潜めていた重厚な威力のコンビネーションが遂に爆発し、立て続けに高山の顔面に強打を叩き込んでグラつかせ、形勢をひっくり返してしまった。
公式判定は77-75、77-75、76-76の実に際どいマジョリティデジションで磯道。駒木のジャッジは76-76イーブンで、人によっては高山優勢のジャッジをしてもおかしくない大変な接戦だった。
デビュー以来10連勝を飾った磯道だが、1階級下のノーランカーに大苦戦。横の足が使えるようになり、ディフェンス面では大きな進歩があったが、今日はとにかく攻撃が全く冴えない大スランプだった。減量苦や生業多忙による練習不足もあったのだろうが、この調子では次戦以降が大変心配である。
一方の高山、随分な研究の跡が伺える戦い振りで大健闘したが、僅かに及ばず。一時は優勢に立ちながら逆転を許した最終ラウンドの“詰め”の部分が、現状の己と日本ランカーとの実力差なのだろう。