駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第4試合・バンタム級6回戦/△中村公彦[大星モリガキ](判定1−0中村勝者扱い)井戸本雅也[大阪帝拳]▲

両者戦績・臨戦過程

試合展望(70-30で井戸本優勢)

バンタム級は14人参加。1回戦で唯一の4勝選手が敗退し、本命不在の混戦ムードの中から渋太く勝ち上がって来た両者の対決。中村は手数、手数でここまで押し切ってきたが、パンチの精度に難が有り、ここではやや苦しいか。井戸本も例年の新人王の水準に比べると力量には「?」が付くが、ハンドスピードとディフェンスのセンスは相対的に一枚上。3戦連続バッティングで出血する“アクシデント体質”なのが気になるが、順当に試合が進めば井戸本の2〜4点差判定勝ちか。

試合経過

1R。中村がアグレッシブにワン・ツー主体の攻めを展開して、右ストレートでクリーンヒットも奪う。しかしハンドスピードがあるものの全体的にパンチの精度が甘く、強引さだけが印象に残る攻撃。対する井戸本は手数では見劣りするも、落ち着いた戦い振り。中村を迎撃する形で右ストレートを度々叩き込んでヒット数では優勢に立ち、ダウン寸前に追い込む場面もあった。
2R。このラウンドも中村はキレのあるショートを連発して手数の山を築く。しかし井戸本はあくまで冷静に対処し、これらの攻撃を不発に終わらせると要所要所で右、左の連打・右ストレートをクリーンヒットさせてジャッジにアピール。中村はややガードが低いうえ、連打を放った際には完全にノーガード状態になてしまう。
3R。中村はこのラウンドも手数豊富だが、ショートはガードで、強打はダッキングで見事にスカされてしまう。しかし井戸本もこのラウンドは守勢で、クリーンヒット2、3発の反撃は決めたが手数では大差をつけられて、ジャッジ的には微妙か。
4R。ここまで余裕を持って攻守で優勢に立っていた井戸本だが、このラウンドに入って突然スタミナ切れを起こして急失速。中村のしつこい手数とボディ攻めの前に専守防衛状態で、有効打は許さなかったものの劣勢は否めず。
5R。前ラウンドから始まった接近戦がこのラウンドも続く。井戸本もボディアッパーを決めて抵抗するも散発的で説得力不足。中村がラウンド通じて手数、手数で圧倒し、アグレッシブと主導権の面で優勢を確かにした。
6R。中村が頭から突っ込んでいって強引な手数攻め。井戸本は完全にバテが来て守勢に立たされたが、ラウンド終盤に最後の力を振り絞って、中村を突き放して距離を取って攻勢に出る場面もあった。このラウンドは少差だろう。
公式判定は、上中58-56(中村優勢)、野田57-57、安田57-57の1−0でドローも、規定により中村が勝者扱いとなって西日本新人王の座を手に入れた。駒木の採点は57-57でイーブン。先を見据えて勝ち残らせたいのは井戸本だが、この試合のパフォーマンスだけで優勢点をつけるとなると、やはり中村か。
試合前半は、地力に勝る井戸本がディフェンス主体の試合コントロールで優勢に立っていたが、4Rからスタミナ切れを起こして全く別人のような平凡なファイトに転落した。中村に敗れたというより己に敗れたような試合。中村は技術に乏しい分を捨て身のアグレッシブさで見事に補完し、この金星に繋げた。実力的には、余程の上積みがないと西軍代表も厳しいだろうが、敗れた他の選手たちの分まで是非とも奮闘してもらいたい。