駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第7試合・Sフェザー級4回戦/●中島涼[ハラダ](判定0−3)武本康樹[千里馬神戸]○

両者戦績・臨戦過程

試合展望(65-35武本優勢)

スーパーフェザー級は12人参加。中島は左フック一辺倒の不器用な戦法ながら、その唯一の武器が日本ランカー級のキレと威力で、ここまでKOの山を築いて来た。しかし今回の相手・武本はこれまでの対戦相手とは一味違う力量の持ち主。既にファイトスタイルも研究されているだろうし、普通に考えると攻守において総合力で勝る武本の有利は覆せない。中島が勝つとすれば、むしろ左フック以外の、武本の注意を必殺パンチから逸らすような“秘密兵器”を開発しているかどうかがカギとなりそうだ。

試合経過

1R。武本は中島の左フックを最大限警戒した戦い振り。右ガードを空けないために出来る限り右ストレートを控え、距離を取ってリーチ差を活かしつつ左ジャブをコツコツ当ててポイントを稼ぐ戦法。それでも2度ばかりワン・ツーで右ストレートを放ってヒットを奪ったが、遠目から見ても“決死の覚悟の右”という感じが伝わって来る。当たらずとも恐るべしは中島の左フックといったところか。その中島、さすがにここまで警戒されては左フックを放つ事すらままならず、牽制気味に出した左ジャブで2発ほどヒットを奪ったに留まった。
2R。武本は完全に中島の左フックの射程を見切って自分の距離を掴んだ感。ロングレンジからジャブで手数を稼ぎ、中島のパンチを軽やかなステップとボディワークで空砲に終わらせる。ラウンド終了間際、遂に中島の左フックが火を噴き、赤コーナー側の中島応援団から歓声が上がるが、これも武本がガッチリガードしていた。
3R。このラウンドも武本が中島の攻撃をパンチが出る前の段階で封殺し、的確なジャブでポイントアウト狙いを実らせる。中島の必殺左フックは相変わらず鋭いが、コンパクトでキレがある分射程距離が短く意外と使い勝手が悪そう。このラウンドも辛うじて不完全なヒットを1発奪ったのみでダメージを与えるには至らず。
4R。武本のステップ&ボディワークは最後まで衰えず。4ラウンド制とはいえ強靭な集中力と精神力が窺える。中島は自分の距離に踏み込んだ途端に射程をズラされるような感じで、完全に勘を狂わされてパンチを放つ事すらままならない。そんな中島を弄ぶかのように、武本はジャブで細かいヒットを重ね、終了間際に右ストレートの有効打を追加して勝負を決定付けた。
公式判定は、上中40-36、野田40-36、安田39-37の3−0で武本の完勝。駒木の採点でも40-36武本。
武本が中島の唯一最大の武器・左フックを完封して、コツコツと細かいパンチを中心に確実なポイントアウトを果たした。いわゆる爽快なドツき合いとは対極の内容となったが、通好みの、地味ながら実に技巧的な試合内容だった。思えば駒木は武本の試合をデビュー戦から全て観ている事になるのだが、デビュー戦当時から今日の姿を想像する事は、正直な話全く不可能であった。短期間でこの成長振りは驚嘆に値する。高校時代にアマチュアで実績がある選手で、決して素質が無いわけではなかったのだろうが……。今の調子なら、この後の試合も楽しませてくれるだろう。
敗れた中島は、やはり左フックを活かす為の“サブ兵器”の開発が急務だろう。並クラスの4回戦相手なら敵無しだろうが、今のままではいずれまた武本クラスの相手に苦杯を呷らされる事になるだろう。