駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第1部第7試合・バンタム級10回戦/○健文・エスプロシボ・トーレス[大鵬](4R2分38秒KO)松原拓郎[天熊丸木]●

メインは大鵬ジム期待・トーレスファミリーから健文トーレスが登場。前座で兄・利幸が敗れており、兄弟で連敗は出来ない所だろう。
その健文は、ここまで4勝(3KO)1敗の戦績。メキシコで迎えたデビュー戦、いきなり世界ランカーと対戦する冒険的なマッチメイクからプロのキャリアを出発させた。昨年12月に日本デビューを果たしてからは、3/6(→http://d.hatena.ne.jp/komagi/20050306#p6)、4/30(→http://d.hatena.ne.jp/komagi/20050430#p16)、6/25と、比較的軽い相手ながら速いペースで連勝を積み重ねて来た。今回は初の10回戦で、他地区からノーランカーとはいえ、元・全日本新人王を迎えての試金石的な一戦。
一方、中日本地区からの遠征である松原は7勝(4KO)3敗5分の戦績。03年の全日本バンタム級新人王だが、これは不戦勝で獲得したもの。それ以後は噛ませタイ人に苦戦するなど順調とは行かず、A級昇格後は日本人相手に1敗1負傷ドローと近況が冴えないのが気がかり。
1R。両者ロングレンジからジャブを突き合いながら様子を窺い、時折タイミングを見計らって接近して激しく高速コンビネーションを打ち合う出入りの激しい展開。共にヒットらしいヒットは無いが、パワーで勝るのは健文で、僅かにジェネラルシップで優勢か。
2R。松原が足を使いながらワン・ツー主体に手数を稼ぎ、ボディストレートでヒットも奪う。健文は強引に2〜3連打を浴びせるも全体的には不発気味。終盤、互いに強打を当て合う派手な場面もあったが、決め手とはならず。
3R。このラウンドも松原がアウトボックスで淡々と試合をコントロール。手数で先行し、健文の強打を上手く捌いて反撃の機会を作らせない。
4R。やはり松原のアウトボックス主導で試合が進行していたが、終盤に入って松原が強打を1発被弾し、たまらずクリンチへ行くと、健文がこれを無理矢理引き剥がして連打を浴びせ、松原を押し倒すようなダウンを奪う。クリーンヒットを受けてのダウンではなく、すぐに立ち上がってセコンドの指示を仰ぐ余裕もあったが、そっちに気を取られている間に10カウント数えられてしまった。松原は戦意の高さを訴えたが、ルール上ファイティングポーズを取らなければKO裁定が下るのは当たり前の事。しかし何ともやり切れない不完全燃焼の決着となったものだ。
呆気ない結末ながらKO勝ちをスコアに連ねた健文は、これで5連勝。しかし今日のファイトは松原の老獪なアウトボックスに本来の“エスプロシボ”な攻撃を封じられて思わぬ苦戦を強いられた。パンチ力の無い相手だったから良かったようなものの、このままでは今後の展開にやや不安を抱かせる試合内容であった。何と言うか全体的に見て「自分が殴り倒されるかも知れない」という危機意識が希薄で、その分だけ試合振りには粗さが目立つし、練習の質・量にも影響が出ているのかスキルの上達スピードが停滞気味であるようだ。以前、駒木は彼を「試合の内容では亀田より上」と評した事もあったが、恥ずかしながら今日を限りにこの評価を一旦撤回させて頂く事にする。昨年末時点の亀田には勝るだろうが、先般のOPBF戦の亀田と比べると明らかに逆転されている。
ところで今日の健文、入場早々にその亀田を意識したような「相手コーナーへ駆け寄ってのヤンキー風メンチ切り」を見せたかと思えば、試合中も相手への挑発行為を繰り返し、試合後は試合後で勝利者インタビューでまで対戦相手を侮辱するようなコメントを残し、果てには下品な腰振りダンスまで披露する態度の悪さ*1であった。これには会場で観戦のボクシングマニア諸氏からも悪評紛々で、正直なところ駒木も不快の念を隠せなかった。ノーランカーとは言え10回戦に出場するメインイベンターであるし、その立場からすれば何をしても勝手だとは思うが、スポーツマンとして最低限の嗜みは備えていなければ、いずれ無用な敵を増やす羽目になるとだけは諫言申し上げておくく。

*1:TV録画中継では、さすがに酷いシーンはカットされていた