駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第8試合・バンタム級8回戦/○川端賢樹[姫路木下](1R2分16秒TKO)川原慎次[正拳]●

メインイベントは西日本のカルト的存在でもある名物ボクサー・川原慎次の悲壮なるチャレンジマッチ。
元Sフライ級日本王者で、現在は日本バンタム級1位にランクされる川端は23勝(13KO)7敗2分の戦績。対する入場テーマ『仁義なき戦い』に似合った強面が話題となり、かつてTV番組でも採り上げられた事のある川原は6勝(5KO)18敗3分の戦績。A級昇格後は勝ち星に恵まれず、ジムを移籍してまで浮上を狙ったが、とうとう“ケジメ”の一戦を迎えることとなった。
1R。川原は文字通り決死の覚悟で前、前へ歩み出て先制攻撃。しかし川端はこの攻勢を余裕のあるブロッキングで完封し、右ストレート、左右のフック、アッパーで逆襲。一時は川原に華を持たせるような感じでわざと打たせた場面もあったが、半ば反射的に放った反撃がクリーンヒットして川原が後退すると、一気に“KO奪取モード”にギアチェンジ。猛烈な連打攻勢で川原をロープに追い詰めてスタンディング気味のダウンを奪うと、容赦の無い追い撃ちを浴びせて一方的な展開に。川原は弁慶の大往生の如く踏ん張ったが、遂にセコンドからタオルが投入された。
能力的には全てのファクターで圧倒的に上回る川端に、川原が気持ちだけでどこまで食い下がるかが焦点だったこの試合だが、結果は文字通りの玉砕。為す術なく136秒で事実上の引退試合は幕を引いた。
試合後は、インタビューで敗者を称える川端と、その川端に涙を流しながら感謝の握手を求める川原の姿が。負ければ引退と勧告された試合の相手に招聘可能な中で最強の選手を選択した川原の決意と、その決意を受け止めて何らメリットの無い試合を引き受けた元王者の男気を象徴する名シーンであった。ミスマッチと言えばそれまでだが、このミスマッチを実現させた2人の熱い心は純粋で、そしてこの上なく尊い。プロボクシングには東南アジアレートで廉売されるKO勝利では決して買えないモノが存在する。それが再確認出来ただけでも今日、この会場に足を運んだ意義があったと確信できた。両選手、並びに関係者の皆さん本当に、有難う。