駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第1部第3試合・ライト級契約ウェイト(60kg)8回戦/●川波武士[大鵬](8R2分04秒TKO)坂井允[鈴鹿ニイミ]○

両者戦績は、川波7勝(4KO)1敗1分、坂井7勝(5KO)5敗。川波は昨年7月から4連勝中で、僅か1年弱でC級からA級への昇格を果たしている。今回は初の8回戦で、ランカー以上を目指す上でも重要な試金石となる。坂井は6/10阿倍野で大沢宏晋[大星]との一戦(判定負け)に続いての西日本遠征。02年には中日本フェザー級新人王の地域タイトルも獲得している。
1R。序盤、坂井がジャブ、ストレート中心の直線的な攻撃でヒットを重ねるも、川波はやがてアームブロックなどの堅い守りで対応し、左右フックで有効打を重ね、打ち合いを有利に進めてKO狙いのアッパーも繰り出した。
2R。川波はこのRも右ストレート、左右フック、アッパーで優勢築くが、戦意衰えず応戦する坂井の左アッパーが見事にクリーンヒットして逆にノックダウン寸前の場面を作る。しかし川波は半ば無意識の状況で猛烈な反撃に転じ、坂井と強打を交換する危険なシーン続出の打撃戦が展開される。
3R。川波はボディワークに乏しく、坂井の速い左に対応出来ず戸惑う感じ。これに乗じて坂井は左のジャブ・フック・ボディブローでヒットを奪い、手数と主導権で優勢。しかし川波もアッパーをクリーンヒットさせて食い下がる。
4R。川波が先手、先手で仕掛け、右ストレートをボディに有効打も、坂井は川波のパンチの多くをガードで捌いて逆に左で細かくヒットを重ね、ラウンド後半には主導権争いでも互角へ。しかし川波は、ラウンド終盤に強打で印象的な場面を作り、ジャッジに再度の攻勢をアピール。
5R。両者ガード・ブロッキング中心のディフェンスを固めつつ、ジャブ起点に強打を浴びせてゆく……という地味な展開。坂井が攻守共に手堅く、ヒット数や主導権でリードするが、ラウンド終盤には川波も攻勢をアピールして小差に持ち込む。
6R。川波は先手でジャブ、左フック、右ストレートで攻勢も、坂井のディフェンス固く、ヒットは概ね不完全なものに。逆にラウンド中盤からは坂井も左ボディ、左右フック、左ジャブで有効打を連発。このラウンドも際どい情勢。
7R。両者ジャブ、ストレート中心の静かな打撃戦。一進一退のヒットの奪い合いに終始し、主導権の掌握時間も互角。採点が難しいラウンドが続く。
8R。ラウンド序盤から川波の猛攻。ショート連打、右ストレートと有効打を重ねて一方的な展開になりかけたが、ここから坂井が左アッパー、フックで有効打を奪うと形勢は一気に逆転。ロープ際に追い詰めてクリーンヒットを連発して川波がグロッキーになると赤コーナーからタオルが放り込まれた。
坂井は8回戦選手にしてはハンドスピードが今一つだが、重厚な技術に裏打ちされた安定感ある試合運びが光る。相手の弱点──ボディワークの乏しさと右ガードの甘さを咎め続けて、最後は見事なTKO勝利を奪った。最終Rの猛烈な逆襲は、形勢微妙な展開の中、敵地の不利で判定なら負けだと悟ったセコンドの「左フックでKO狙い」という指示がドンピシャでハマったものだそうだ。陣営にしてみればしてやったり、という所だろう、
一方、敗れて連勝街道がストップしてしまった川波。彼も攻守共に確実な技術を感じさせる好素材だが、頭と体が同時に動かないタイプなのか、肝心な所で動きが極端に鈍る場面が非常に多かった。A級で戦うのなら、手と足と頭を絶えず動かしながら戦うルーチンを体に染み込ませておきたい。