駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第8試合・ライト級8回戦/○大沢宏晋[大星](6R2分45秒TKO)安川健一[守口東郷]●

メインイベントは前回の阿倍野興行でA級昇格を果たした05年度西日本新人王の大沢宏晋が初のメインイベント・8回戦に挑む。ただし、ずっとA級選手との試合は前回に1度経験しており、今回は初めてづくしとはいえ、結果以上に内容が求められるマッチメイクでもある。
その大沢は7勝(2KO)1敗2分の戦績。唯一の敗戦は前年度の西軍代表決定戦で、今年4月の再起後は2連勝でストレートのA級昇格を果たしている。今回は東京へ“武者修行”に出るなど意欲的な調整を重ねて来た。
対する安川は6勝(3KO)7敗の戦績。昨年12月に6勝目を挙げてA級昇格を果たして以来のリングとなる。B級通過に丸3年を要し、その間の成績は2勝4敗。データ上では苦戦覚悟の舞台で再起となるが……
1R。大沢は「受けて立つぞ」と言わんばかりのドッシリとした構え。やや粗い安川の攻めを捌いて、要所で連打からの左ジャブ、フック、右アッパーで有効打を連発。ただしフィニッシュブローとなるべき右のストレート、フックの精度が悪く詰めの甘さも目立つ。
2R。大振りフックでつんのめりつつ攻める安川に対し、大沢は左ジャブで遊びながら隙の大きい安川に右ストレート、左フック、そしてボディブローを決めてゆく。この攻勢の前に安川は為す術なし。
3R。大沢はこのラウンドも着実に左中心にヒット数を稼ぎ、右フックで有効打も。安川も右ストレートで大沢の低いガードを咎めるが、追撃する技術に欠ける。
4R。大沢の左ジャブがこのラウンドも有効で、相手の右目上を切り裂いてダメージを与える。安川の攻勢は相変わらず粗く、パンチが的の外へ逸れてゆく。大沢はフック連打、右アッパーで有効打を奪うがこのラウンドもKOまで持っていけない。
5R。大沢の一方的展開が続くが、左のジャブから先の強打が乏しく、決定打が奪えない。途中、安川に合わせてパフォーマンスの質を落としてしまうシーンもあり、低調な内容のラウンドに。
6R。大沢が倒し方を見出せずに戸惑うようなもどかしい展開に。時折連打を見舞うが、ヒットが浅い印象で、淡々と時間が過ぎてゆく。それでも最後はコンビネーションで畳み掛けて、ダメージの蓄積を見て取った野田レフェリーがストップをかけてTKO。
大沢が力の差を見せつけて完勝も、ミスマッチに近い相手にもどかしさを残す内容。A級緒戦としては合格点だが、客にチケット代分の満足感を与える役目を背負ったメインイベンターとしては赤点ギリギリのパフォーマンスと言わざるを得ない。ミスマッチに近い力量差があった相手だっただけに、鮮やかな10カウントKOで決めて欲しかった。関係者経由で聞いた話だが、彼は“左利きオーソドックス”で、リードブローの巧さと裏腹に右の強打の精度に欠ける主たる要因は、どうやらこの利き腕の問題のようだ。新人時代に悩まされたスタミナや守備面の欠点が解消されつつある中今、新しい課題は右強打の精度向上という事になるだろう。
安川は劣勢の中でも渋太く粘ったが、技術水準がA級で戦うには厳しいレベル。今日は伸び盛りのホープが相手でもあり、終わってみれば勝ち目の極めて薄い試合だったのかな、といったところだ。