駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第2部第6試合・フライ級10回戦/○戎岡淳一[明石](判定3−0)クリストファー・テポラ[比国]●

セミファイナルは4月に日本Lフライ級王座に挑戦するもドローで涙を呑んだ戎岡の再起戦。
戎岡は13勝(6KO)8敗3分の戦績。以前から遠征や格上挑戦を繰り返した結果、このランクの選手にしては目立つ負け数だが、昨年9月に元世界王者のピチット・チョー・シリワットを逆転TKOに降して世界ランクを獲得。日本タイトル挑戦に失敗した現在もWBA13位&WBC15位のランキングを保持している。
対するテポラは9勝(4KO)5敗5分とのアナウンス。現在比国Lフライ級9位で、今年3月にはトラッシュ中沼[国際]の復帰第1戦の相手を務めている(2RKO負け)。
1R。テポラはアグレッシブにワン・ツー中心の直線的な攻撃。戎岡はダッキングで捌こうとするが躱しきれずに数発被弾。主導権も奪われ、手数でも劣勢。決まった反撃も右フック1発ぐらいでこのラウンドは劣勢。
2R。このラウンド、戎岡もアグレッシブに立ち向かうが、テポラのハンドスピードある鋭い攻撃に気圧され気味。それでも戎岡はラウンド後半に手数攻めしてプレスを掛けるが、これもテポラに左のジャブやカウンターを度々貰ってヒット数で劣勢となる。
3R。戎岡はあの手この手で反撃。今度はコンパクトなパンチでヒットを重ねて主導権を奪うと、そのチャンスを逃さず前、前へ進出してロープに詰める攻勢。テポラもフックを振るって抵抗するが、このラウンドは劣勢。
4R。戎岡の攻勢も目立つがテポラの奮戦も際立つ。途中、偶然のバッティングで負傷しドクターのチェックを受けた戎岡は勝負を急いだかリスキーなストレート合戦に出るが、ここもテポラが優勢。その後もテポラはジャブ中心にヒットを連発し、戎岡の強気な攻勢もガードして微差ながら優勢をキープする。
5R。戎岡は右ストレートをクリーンヒットされビハインドを背負うが怯まず攻勢に出ると、ロープに詰めて手数攻めして上下にヒットを浴びせて逆転。だがその後もテポラは右ストレートで有効打、強打の打ち合いでも戎岡側からすればヒヤリとするような被弾もあった。なおこのラウンドにテポラはヘディングで減点1。バッティングで戎岡が出血してはいたものの、これも日本人同士の試合なら減点までは課せられなかっただろう。
6R。戎岡は相手の正面に立ち過ぎの印象。相変わらず肝心な所でガードも甘くなり、このラウンドもテポラにワン・ツーをビシビシと浴びせられ、右ストレートのクリーンヒットで追い討ちされる。それでも戎岡は前、前へ攻めていって手数を浴びせヒットも奪うが、決定的な痛打は浴びせられず劣勢は否めない。
7R。戎岡はまたもテポラをロープに詰めてアグレッシブな攻勢。ヒットも順調に重ねるが、やはり決定打を浴びせるには至らず。テポラもラウンド終盤に激しく抵抗し、ジャブ、ストレートで有効打を連発。結局このラウンドの形勢は微妙に。
8R。アグレッシブな戎岡の攻勢が続くが、テポラのディフェンスが巧み。逆にストレート中心の反撃を浴びてまたしても際どいラウンドに。“クリーンヒット”はテポラ、“アグレッシブ”は戎岡。公式ジャッジは地元有利で戎岡に流れそうだが……
9R。戎岡は相変わらずの圧力、手数で攻勢。打ち合いも挑んでこれを互角に渡り合う。やはり大差は無いが、このラウンドはヒットの質・量に差がない分戎岡の攻勢点が評価対象か。
10R。やはり戎岡の攻勢が目立つ。テポラの左カウンターやジャブに度々頭をハネ上げられて不恰好なシーンも目立つが、構わずテポラをロープやコーナーに詰めて手数を浴びせて主導権と攻勢点をアピール。
公式判定は上中98-92、宮崎96-93、野田95-94の3−0で戎岡。駒木の採点は「A」96-93「B」98-95で戎岡優勢。5Rにテポラはヘディングで減点1。“クリーンヒット”の観点ではテポラが小差優勢のラウンドが多く、採点者の立場と主観次第ではもっと際どいジャッジになっていてもおかしくない。6点差ジャッジは明らかな地元判定である。最近、上中ジャッジは酷い地元判定採点をつける事が多過ぎる。
戎岡が相変わらずの被弾癖をモロに露呈して大苦戦。“クリーンヒット”の劣勢を“アグレッシブ”の大差優勢で何とかフォローして勝ちは拾ったが、タイトル挑戦へ向けてのアピールという意味では足踏み、いや半歩後退か。こちらは先程の武本康樹と逆で、客席を沸かせるプロの仕事は出来るが、結果・内容を残す仕事の方で課題が山積だ。