駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第2部第7試合・フェザー級10回戦/●アレックス・エスカネル[比国](判定0−3)武本在樹[千里馬神戸]○

メインイベントは、昼の部でTKO勝ちした玉越と並ぶ千里馬神戸ジム・副将格の1人・武本在樹が登場。早期のタイトルマッチ再挑戦へ向けて、実力派比国人選手を持ち前の強打でKOしたいところだが――
現在OPBFフェザー級7位、日本同級1位の武本は19勝(12KO)5敗1分の戦績。昨年4月に挑んだ日本タイトルマッチで負傷の末敗れて以来、タイ人相手の調整戦を続けている。
対する比国Sバンタム級王者のエスカネルは23勝(11KO)11敗5分とのアナウンス。6月に吉村憲二[大阪帝拳]をKOしてから更に1勝1KOが加算されているが、boxrec等に記録は記載されていない。これが4度目の来日で、これまで日本での試合は1勝1敗1分と、ノーランカーのA級選手には互角以上に健闘している。
1R。武本が先手必勝とエスカネルのガードの隙間にジャブを刺し込んでゆこうとするが不発。堅守のエスカネルは守勢否めぬが、ゴング寸前に放った一発がこのラウンドで唯一のヒットらしいヒット。
2R。武本が主導権を握って攻勢。エスカネルが固めたガードの下にアッパーを打ち込もうとする。エスカネルもやがて圧力をかけつつ手数伴う攻勢で挽回するが、ラウンド終了直前に武本はボディへヒット2発。
3R。武本はこのラウンドも先手で強打の狙い撃ちに出るが、エスカネルのガードは固くヒットは奪えない。逆にエスカネルはワン・ツーにフックを交えた正攻法の攻勢で手数互角に応戦。散発的にヒットも奪って互角かそれ以上の形勢とする。
4R。武本はガードの上にジャブを放って手数と主導権をキープしながら強打を浴びせるチャンスを窺う。エスカネルは時折攻勢に出る場面もあるが、全体的には守りに回る時間が長い。武本はラウンド終盤に左右のボディから右を顔面に当てて小差ながらリードを確保する。
5R。ラウンド序盤はエスカネルがプレスをかけて武本をロープに詰める攻勢。フック、ストレートでヒットも奪う。武本も中盤から逆に圧力をかけてボディを攻めるが、終盤になって再びエスカネルの圧力の強さが目立つ。
6R。決め手に欠ける淡々とした内容のラウンドが重ねられてゆく。“クリーンヒット”の要素はスコアレスドローの状態で、プレスの強さとガード上への手数を競っている感じ。武本のボディ攻めがやや効果的に映るが、エスカネルも渋太く抵抗して微差の範疇。
7R。このラウンドも決め手の無い攻防が続く。短い時間で攻守を交代しつつボディ中心の打ち合い。ヒット数はエスカネルが僅かに優勢だが、これも互角から微差。
8R。武本はアグレッシブにボディ中心のショートブローを連発するが、ことごとくアームブロックされてヒット自体は少ない。対するエスカネルはラウンド序盤に左フックを有効打し、その後も度々ジャブをヒットさせて“クリーンヒット”の要素では上位。
9R。武本は手数こそ優勢だがエスカネルのガードを破れず成果は不完全か細かいヒットのみ。逆にエスカネルの的確なジャブを被弾し、ボディ攻めも受ける。ラウンド終盤にはフックでマウスピースを吐き出しかける仕草を見せて印象を悪くした。
10R。ラウンド前半はエスカネルがヒットを伴う攻勢を見せたが、後半には武本が巻き返してボディブロー中心に不完全ながらヒットを重ねた。微差ながら武本有利のラウンドか。
公式判定は大黒100-90、宮崎98-92、北村98-94の3−0で武本。駒木の採点は「A」95-95イーブン、「B」98-97エスカネル優勢。
巷の戦評では“アグレッシブ”要素で優位をキープし続けた武本の完勝という声が多数派であり、当ブログの見解は少数意見として受け止めて頂きたい。ただ、観戦記本文の通り、駒木の目には“クリーンヒット”の要素ではエスカネルが優位に立ったラウンドが多いように映っており、それが僅差の採点結果に繋がったという次第である。少なくとも、明確なヒットを数えるほどしか奪えず、10ラウンドで見せ場らしい見せ場を作れなかった武本を「完勝」という言葉で賞賛する事には賛成しかねる。また、最後まで客席から平坦な内容にお付き合いし、見事なまでに冷え切った会場の空気を体感させられた身としては、残念ながらこの試合を「凡戦」と断ぜざるを得ない。