駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第2部第5試合・Lフライ級契約ウェイト(48.0kg)10回戦/●大洞達馬[金沢](判定0−3)山脇正輝[大阪帝拳]○

メインは奇しくも日本ミニマム級2位・堀川謙一[SFマキ]に敗れて以来の再起戦という両者による“敗者復活戦”的マッチメイク。
大洞は8勝(2KO)2敗1分の戦績。デビュー戦をドローとした後、2戦目から慎重に相手を選びつつも2年間で7連勝をマーク。しかし手堅く8連勝を狙いに行った05年11月の試合でタイ人に思わぬKO負けを喫して挫折。翌06年4月の再起戦で先の第4試合に出場した利幸トーレスとの激戦を制して復活を果たすも、10月には堀川謙一に右ストレート一発で倒されて完敗。再度の仕切り直しを強いられる事となった。
対する山脇は7勝(0KO)2敗1分の戦績。05年に西日本Lフライ級新人王となるが、西軍代表戦で惜敗。それでもその後を連勝してA級でも1勝を挙げたが、日本ランク奪取を狙った今年2月の堀川戦では大差判定負けでこちらも完敗。今回はこの敗戦を糧に出来るかどうか、正念場となる一戦だ。
1R。大洞は距離開けてワン・ツー狙いだが、山脇は構わず攻め込み右フックをクリーンヒット。綺麗なノックダウンを決めた。山脇は当然のようにKOを狙いに行ったが、ここは大洞も手数を出しまくって凌ぎ切った。但し山脇はガード手堅く、被弾を許さない。
2R。大洞がショート連打をガードされるも構わず放って手数を稼ぎ、ボディにヒットも奪い先制。だが山脇はガードを固めつつ、ジャブ、フックなどで手数を浴びせ、ラウンド終盤にアッパー、フックで有効打を決めて形勢を互角近くまで戻した。
3R。大洞はアグレッシブな手数攻勢でワン・ツー、アッパーを放つがディフェンスが甘く、山脇の左フック、アッパー、ボディブローを度々痛打される。パンチ力で勝る、山脇が与えたダメージ量で優位に立つ。
4R。大洞のアグレッシブな手数攻めが奏功し、主導権奪取。山脇はフェイント交えて反撃も苦戦を強いられる。だがラウンド終盤に山脇が反撃、連打で効かせた上に左ボディにフック、アッパーでグラつかせて一気に逆転か。
5R。このラウンドも前半は大洞がアグレッシブに手数攻め、ショートワン・ツー連打に左アッパー、フック上下ダブルなどで先制するが、後半に入って山脇が強打攻勢で逆転。左フック→右アッパーでこの試合2度目のダウンを奪うと、その後も攻勢をキープして圧倒。
6R。山脇が左右ボディから右アッパー、ワン・ツーと繋げて序盤から大差リードを奪う。大洞もアッパーでヒットを重ねたが、打たれた際の仕草が弱弱しく印象が悪い。山脇は攻撃中心にシフトして被弾が増えたが、そのリスクに見合った戦果を挙げている。
7R。ラウンド序盤、山脇が攻めにかかる瞬間を狙って大洞が連打攻勢に出てヒットを多数連発。山脇も一旦はボディ打ちで反撃したが、大洞は再び圧力かけつつの手数攻めで突き放す。ラウンド終盤には山脇がまたも強打で攻め込んだが、劣勢挽回にまでは届かず。
8R。密着しての乱打戦に。手数で勝る大洞に対し、山脇はボディブロー、左アッパー、右ストレートと強打をヒット、有効打。しかし大洞は手数を着実にヒットに繋げており、ジャッジ的には有利か。
9R。クロスレンジでのフック、アッパー合戦。手数は大洞が優勢だが、山脇が見栄えする強打を度々ひっとさせダメージブローでは有利。手数か強打かでジャッジが割れそうなラウンド。
10R。ショートレンジ乱打戦。山脇は左ボディ中心に強打攻勢に出たが、大洞の回転力豊かなフックが数的優位を生む。山脇はガス欠か、攻撃に精度を欠いた。
公式判定は野田97-92、宮崎96-92、原田95-93の3−0で山脇。駒木の採点は「A」96-92「B」97-93で山脇優勢。
山脇がガードと軽打一辺倒のファイトスタイルから脱皮。テンプルを狙うフック、重い左ボディ、ダウンを奪った右アッパーと、決定力のある強打を次々と披露して快勝した。後半にバテて攻めに精度を欠いたのが今後長丁場を戦う上での課題になるだろう。また、攻撃に主眼を置いた際のディフェンス面へのケアも考えておきたい。
大洞は手数攻めで健闘したが、要所で打たれ弱さが顔を覗かせ、2度のダウンで都合4点分のビハインド。他のラウンドでもなし崩し的にポイントを失ってしまった。後半戦になってようやく見せ場を作ったが逆転KOを予感させるシーンは皆無で、決定力不足も露呈した。