駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第1部第7試合・フェザー級6回戦/○山下将臣[高砂](判定3−0)ティラサック・ユーチュンポン[タイ国]●

所属ジム会長の息子でもある山下は4勝(1KO)2敗1分の戦績。今年度の新人王戦では西日本準決勝で山本敏充[江坂]に3RTKO負けを喫して敗退。今回、6回戦からの再出発となる。
対するティラサックはタイ国フェザー級4位との肩書きだが、来日成績は4戦して3KO負けを含む全敗という見事な“斬られ役”。
1R。ティラサックは動き、ハンドスピードとも緩く噛ませムード満々だが、山下の単調な攻撃をステップワークで捌き、軽くアッパーで合わせるなどの“仕事”も見せる。ラウンド終盤、山下が右ストレートで有効打も、追撃のラッシュは不発気味で微差の優勢に留まる。
2R。山下はラウンド序盤の打ち合いこそ僅かに優勢だったが、「今日の相手は組し易し」と判断しているティラサックは、KO負けを恐れずアグレッシブに手数を増やしてショートブローで山下を攻め立てる。山下も圧力攻めを仕掛けるが、ステップワークで捌かれる場面が目立つ。
3R。山下はこのラウンドもティラサックと互角の打撃戦を演じてしまう。相手にハンドスピードとパンチ力が無い分助かっているが、噛ませタイ人と真剣に戦って接戦になってしまう。それでも漸く右フックを打ち下ろしてクリーンヒット1発奪い、これでどうやら10-9の採点を確保したか。
4R。ティラサックはアグレッシブに圧力かけ、クロスレンジからロープに詰めての左ショートアッパーを再三ヒット。山下も散発的に右ストレート、フックでヒットを奪うが自分のペースで試合が出来ずに苦戦気味。
5R。ティラサックはもはや余裕たっぷりの試合振り。ラウンド前半に右アッパーでヒットを奪うと手数でも先行。後半に入って山下が圧力をかけて手数攻めで逆襲するが、その攻めも雑でオープンブロー気味。ヒットも少なく、形勢微妙なラウンドになってしまう。
6R。山下は前、前へとプレッシャーをかけてゆくが、ティラサックのステップ、ボディワークに捌かれて不発気味。ティラサックは闘牛士のような戦いぶりでジャブ、アッパーを細かくヒットさせていった。
公式判定は上中60-55、大黒59-56、宮崎58-56の3−0で山下勝利だが、これは酷い地元判定。駒木の採点は「A」58-56「B」59-57でティラサック優勢。専門誌の戦評には「山下が圧倒」などと書かれていたが、本当に圧倒していればタイ人相手の試合ではフルマークのスコアが3つ並ぶだろう。
1R途中辺りからタイ人の顔に明らかな余裕の色が浮かび、その顔色同様の試合展開となった。判定結果が出た時もティラサックは「やれやれ」という馬鹿にしたような苦笑い。山下は地元判定に救われて何とか勝ちを拾ったものの、噛ませ役に攻撃を余裕を持って捌かれる酷い内容で、課題だらけのほろ苦いB級緒戦となってしまった。そもそも新人王戦の戦い振りからして、未だ噛ませタイ人を宛がわれてプロテクトされるような地力はなく、ここはもうちょっと足元を見たマッチメイクをするべきだったのではないかと思う。