駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第5試合・Sバンタム級6回戦/●荒井龍士[緑](判定0−2)木村友紀[明石]○

中日本(3人参加)代表の荒井は4勝(0KO)無敗の戦績。中日本トーナメントを、1回戦と決勝の間に調整戦を挟む意欲的な臨戦過程で勝ち抜けて、この代表戦にコマを進めた。
西日本代表の木村は5勝(2KO)1敗1分。デビュー2戦で躓いたが、その後はトーナメント戦を含めて5連勝中だ。
1R。荒井はノーガードに近い腕の位置から変則的なアッパー中心のトリッキーなファイトスタイル。それでいてジャブ、ストレートを絡めるなど、対戦相手からすれば実にやり辛そうな選手で、このラウンドは戸惑い気味の木村を尻目に手数、ヒット数で優勢に立った。しかし曲者揃いのトーナメントを潜り抜けて来た木村は、やがて圧力とワン・ツー中心の攻めで応戦。幾らかヒットもお返しして小差まで持ち込んだ。
2R。このラウンドも変則のファイトで足を使いながら攻める荒井だが、これを木村はワン・ツー主体の正攻法で迎撃し、主導権を奪い取る。だが荒井も要所でアッパーを決めて抵抗。終わってみれば微妙な形勢のラウンドに。
3R。木村はガードやパーリングで距離をコントロールし始めた。荒井のアウトサイドブローを不発気味に終わらせ、逆に細かくショートワン・ツーを中心にヒットを重ねてゆく。
4R。ラウンド序盤は荒井が手数攻めでペースを奪いかけるが、中盤以降は木村のショートが当たり始めて逆転。ただし荒井も当たりは浅いがヒットを奪っており、微差の範疇。
5R。近距離〜密着距離の乱打戦。木村は自分の距離を確保しようとするが、荒井の体を浴びせながらの攻勢を、ガードの隙間から浴びてしまい劣勢。木村も細かく反撃はしているが……
6R。このラウンドは木村が自分の距離を奪ってヒット重ね先行。だが荒井は密着距離とロングレンジを使い分けつつ渋太く連打で反撃し、小差まで挽回した。
公式判定は堺谷58-57、伊藤58-57、村瀬58-58の2−0で木村。駒木の採点は「A」58-56木村優勢、「B」58-58イーブン。接戦のラウンドを荒井に振り分ければ逆転まであったが、あまりに変則的なファイトが嫌気されたか。
全体的な水準は西日本予選の2回戦レベル。先のバンタム級決勝と比較されて可哀想な面はあるが、内容的に物足りなさは否めなかった。それでも木村は変則的な相手に対して、彼なりの技術で対応し、微妙ながらも小差ポイントアウトで対応力と勝ち運の強さをアピールした。ただし密着された時のガードの甘さや、主導権争いの拙さなど全日本決勝での不安材料はうず高く積み残されたままである。
荒井はトリッキーな動きで大いに西日本覇者を苦しめたが、テクニック面のバックボーンが余りにも脆弱であるように思える。地元開催ゆえ“温情”ある採点も期待出来たのだが、中日本のジャッジ陣にもソッポを向かれてしまった形。この技術水準の選手では、後楽園に送り出すのはかえって躊躇してしまうという事か。