駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第7試合・Sライト級契約ウェイト(62.2kg)10回戦/○中川知則[進光](判定3−0)禹雨成[韓国]●

メインイベントはランキング復帰を目論む中川知則が、1階級下のOPBFランカーを迎え撃つ。
その中川は14勝(4KO)5敗4分の戦績。かつては本望信人[角海老宝石]が保持していた日本タイトルに挑戦し、スリップ気味ながらダウンも奪ったが敗退。その後はチャンスや勝ち運に恵まれず、ここ2年は試合数も減ってしまっている。ここでOPBFランクに載って、再浮上を果たしたいところ。
対する禹は04年1月デビュー・8勝(1KO)2敗とのアナウンスで今回が初来日。現在は無冠だが、元韓国ライト級王座の獲得経験もあり、OPBF3位のランキングもその時に獲得したものだろう。
1R。禹はまるで噛ませタイ人の様な消極ファイト。体捌きや時折振るうパンチからして、実力もせいぜいタイ国内ランカー級。そんな相手に中川は圧力かけつつワン・ツー、右ストレート、ボディフックなどで手数、ヒット数で明確な差を作る。
2R。禹は完全にカウンター狙い。中川はロープ、コーナーに詰めて戦う時間が長く、左フック、ワン・ツー、ボディブローで数的には圧倒。しかし試合展開は淡々としたもので早くもダルファイトの予感。
3R。中川は、禹の雑な攻撃を捌きつつ隙窺い、ロープ際に詰めてボディにクリーンヒット、有効打。大凡戦ムードだが、ジャッジ的な優勢は明らかにする。
4R。ジャブ、ワン・ツーの差し合いとなった前半戦を経て、密着〜近距離でのボディ中心のダルな打ち合いで戦線は膠着。禹の地力の無さと中川の決定力の無さばかりが目立つ。
5R。消極的で手数少ない禹に、中川はわざわざロングレンジから形作りに励む。彼なりのリズムなのだが、観客側からすれば最悪の凡戦パターン。ワン・ツー中心に、密着してはボディブローと、中川の優勢は明らかだが……。
6R。3分の大半をロープに詰めての攻勢に費やした中川だが、ワン・ツーをヒット&アウェイで打つばかりではKOの予感は皆無。圧倒してなお課題ばかりが見え隠れ。
7R。このラウンドも中川は、白旗状態の禹に対してジャブ中心の丁寧な組み立て。ストレート、ボディブローと攻めてもパンチ力を感じず、決定的場面は皆無のまま。
8R。一方的な中川ペースの試合が続く。中川はジャブ、ワン・ツーからフック強打を連発して有効打浴びせるが、禹はタフさだけは韓国人らしく、ダメージを負った印象も与えぬまま3分間を戦い抜く。
9R。中川が禹をコーナーに押し込みつつ、ボディ中心の攻勢でジャッジ的には圧倒。だが禹の地力不足も手伝って、観客席は静まり返ったままの状況。
10R。中川はややアグレッシブに右ストレート強打を立て続けに浴びせていくが、やはり決定的な場面は作れず。コーナーに詰めての猛攻も見せたが、ダウンに繋がるクリーンヒットは最後まで無かった。
公式判定は野田、宮崎、原田の三者いずれも100-90で中川を支持。駒木の採点も「A」「B」いずれも100-90で中川優勢。
中川は名ばかりのOPBFランカーに完勝も、相手の弱さに甘えるような試合振りでメインイベント失格の体たらく。決定力不足ばかりが目に付いた。明らかに手抜きした相手に辛勝をプレゼントされた4月の試合といい、こんな結果と内容のそぐわない試合ばかりで名目上のランキングを手に入れて何をしようと言うのか? 次こそはメインイベンターに相応しいパフォーマンスをお願いしたい。
初来日の禹はOPBFライト級3位の肩書きだが、韓国王座獲得で手に入れた身分不相応な地位だったようで、どうやら韓国ボクシング界の層の薄さを体現するような選手だったらしい。おまけに戦意が高い事だけが取り得の韓国人選手なのに全く無気力な試合振り、まるで噛ませタイ人のような体たらくであった。一昔前のプロレス界でいう「とんだ一杯食わせ者」だ。彼に勝って東洋ランクに載るのなら、東洋ランクはあと30か40ぐらい枠を作らねばならないだろう。
ところで、この試合の途中、膠着した戦線に嫌気が差して、試合中ふと客席を眺めてみると、何とジョー小泉氏の姿が。亀田大毅×ヨッピー・ベヌー顔負けの露骨なマッチメイクと思っていたら、さもありなん。ジョーさん、アンタ良い仕事し過ぎだよ(苦笑)。