駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第1部第10試合・バンタム級8回戦/○村井勇希[Gツダ](判定3−0)村田匡教[塚原京都]●

第1部メインは、ここ2戦で敵地でのABCO王座連続挑戦“武者修行”を敢行した村井の国内復帰第1戦。相手は今年に入って充実著しい村田匡教だが、元日本ランカーの意地にかけても負けられないところだろう。
村井の戦績は11勝(3KO)9敗4分。00年のフライ級西日本新人王を獲得した後は、強豪相手へ積極的に挑戦する意欲的なマッチメイクで一時は日本Sフライ級6位にランクされた事も。その後は負傷等もあって調子を崩しランキングからも転落したが、今年はタイに乗り込んで世界ランカー相手の地域タイトル戦で2戦いずれも12Rフルに戦う健闘を見せた。
対する村田は7勝(5KO)7敗の戦績。99年のデビュー以来黒星が先行し、03年頃からは試合枯れ気味の苦境に瀕したが、今年4月に05年度バンタム級西日本新人王の中村公彦[大星森垣]を降すと、9月には竹本裕規[風間]にも判定勝ちを収め、A級初勝利を挙げると共に通算成績を五分に戻した。デビュー7年にして漸く訪れたチャンスを活かし、日本ランク圏内に足を踏み入れたいところだが……
1R。村田が終始圧力をかけて手数を出す展開だが、村井はキレのあるボディワークで概ねこの攻勢を捌き、シャープなジャブと左右アッパーでヒット、有効打を奪う。しかし村田もボディ攻めも交えて攻勢点で健闘し、このラウンドは互角の形勢。
2R。村田の圧力と手数がこのラウンドも目立つ。上下に打ち分けたフックが印象的。これに対して村井は技巧的な攻めを展開。ジャブを駆使して試合の主導権を手元に引き寄せ、このラウンドも互角。
3R。村田が村井をロープに詰め、ジャブとボディブローで先制。しかし村井はやはりジャブ中心の攻撃で着実にヒットを積み重ね、アッパーとボディ打ちでジャッジにアピールする。ただ、村井は相手の射程圏で固まってしまう悪癖で無駄な被弾も多い。
4R。村井がジャブで主導権。手数とヒット数でリードを奪い、ラウンド終盤には右アッパー、ストレートで有効打も。村田はアグレッシブさとプレッシャー、そしてボディブロー中心に攻勢点を稼ぐ戦法で粘るが、“クリーンヒット”の観点で劣勢。
5R。村井は左アッパーで先制打すると、ジャブ、ボディブローで追い討ち。村田はやはり圧力攻めからジャブ起点に手数を稼いで反抗するが、ラウンド終了直前に村井が右アッパーで有効打奪ってポイント確保。
6R。村田がジャブ、ストレート、ボディブロー、アッパーと攻めるが、村井もほぼ同じ種類のパンチで対抗。攻撃の鋭さをヒット数優勢に繋げて小差リード。終盤の打ち合いでは派手に有効打、クリーンヒットを交換して、これは優劣五分の内容。
7R。クロスレンジでの乱打戦。村田がボディ中心にヒットを奪うが、村井は左フックに左右アッパー、右ストレートで要所をまとめた。同じ1発のヒットでも村井の方が重みとキレが違う分だけジャッジに与える印象も違っている。
8R。村田は最後まで圧力と手数に賭ける。ショートフックを上下に散らしてヒットを奪っていったが、村井は攻められる度にキレあるショートフック、アッパーで有効打をお返しして優勢を手放さない。試合最後の激しい打ち合いでもボディワークとパンチのキレで攻守共に圧倒。
公式判定は半田80-72、宮崎78-74、北村77-76の3−0で村井。駒木の採点は「A」79-73「B」80-74の3−0で村井優勢。
村井は終始プレッシャーをかけられ、不用意な被弾も少なくない苦しい展開だったが、相手の打ち終わりを狙うアッパー、フック中心の攻めでヒットの質と量で大きく上回り、終わってみれば完勝。世界ランカー相手では通用しなかった長所が今日の相手では通用し、逆に強豪相手では致命傷になるような弱点でも、今日は何とか誤魔化しきったという事なのだろう。元ランカーの面目は保ったが、さて再度のランク入りを目指すとなると、やや不安が先に立つ微妙なパフォーマンスでもある。
村田は愚直に自分のファイトスタイルを貫いたが、格の差を見せ付けられた格好。日本ランカー級と比較すると、動きやパンチのキレで見劣りが否めない現状だ。