駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第2部第7試合・バンタム級10回戦/●松田一弘[金沢](判定0−3)サミンヌム・ウォーウィワッタナーノン○

松田は7勝(4KO)5敗5分の戦績。長期ブランクを経て再起した昨年6月以来、現在2連勝中。今回は東洋ランカー相手に“格上挑戦”となるが……
サミンヌムは自称戦績16勝(7KO)8敗。最新のOPBFランキングではバンタム級で9位にランクインし、タイ国でも1位のコンテンダー。今回が初来日。
1R。サミンヌムは完全に噛ませモードだが、打ち終わりの狙いの左→左→右の連打が鋭くヒットし、松田の攻撃を捌くボディワークも素軽い。松田はロングレンジから捨てパンチ気味のジャブ中心に様子を窺い、軽いヒットも2発奪ったが、パンチがガードを叩く事すら少なく、これでは“アグレッシブ”要素が成立しない。
2R。松田はこのラウンドも慎重な組み立てで、手数、ヒット数の少ない軽い攻めに終始。サミンヌムは打ち終わり狙いのワン・ツー・フック、カウンターの左ジャブ、フックでヒット数でも優位。
3R。サミンヌムが明らかに手加減しつつも、断続的な攻勢で右ストレート、左フックを再三クリーンヒット、有効打させてゆく。松田も足を使いつつジャブ、フックでヒットを奪うが、パンチの重みがまるで違う。
4R。サミンヌムは左ボディ有効打で先制するが、松田はこの攻勢を右で迎撃して2発有効打。更には体格とリーチ差を活かすジャブ中心の攻めを展開するが、サミンヌムは左カウンターから右強打の連打で松田のヒザを折らせるクリーンヒット。追撃まで見舞って形勢再逆転。松田はここまで明確に奪ったラウンドが全く作れていない。
5R。松田は意を決して距離を詰め、漸く手数が手数として成立し始めた。右ストレート有効打も奪って優勢。ラウンド後半からサミンヌムは松田をロープに詰めて左ボディと右ストレートを狙うが、ここは松田がスピードの違いで闘牛士のようなステップワークで捌いた。
6R。ラウンド序盤は松田が中間距離から攻勢に出て右をヒットするが、中盤に手数が減りだすとサミンヌムの圧力攻めが機能し始めて左ボディがクリーンヒット。終盤になると今度はサミンヌムの手数が減り、松田が攻めさせてもらう形で右がヒット。ジャッジ的には難しいラウンド。
7R。サミンヌムは噛ませモードながら、松田の慎重な攻めをボディワークでいなして左カウンターと右ストレートでインパクトのある有効打。隠しようの無い地力差が浮き彫りとなるロースコアの展開。
8R。サミンヌムは色気が出たか、倒しにいくかのようなアグレッシブさで松田を攻め立てる。ラウンド中盤、タイ人がやや息切れした所を松田が迎撃して手数でリードするが、サミンヌムは左のボディとカウンターでヒットを追加し、またも逆転。
9R。松田は右ストレートで先制打を奪うが、サミンヌムの強引な左フックに押し倒されるように尻餅をついてしまう。この試合を裁く原田レフェリーは一瞬首を傾げたが、どう見てもナックルが当たっており、ダウンの宣告をする他なかった。その後は松田が立ち直り、ガードの低いサミンヌムにジャブ、ストレートを打ち込んだが、ダウン1回分のビハインドを覆すには程遠い。
10R。松田はKO狙いの接近戦を挑みヒットを重ねていったが、ラウンド後半には息切れ。専守防衛で時間を潰すサミンヌムに左カウンターを貰ってしまい、最後まで不甲斐ない内容に。
公式判定は半田96-93、宮崎96-93、野田96-94の3−0でサミンヌム。駒木の採点は「A」97-92「B」98-93でサミンヌム優勢。試合の性格上、すわ今年一発目の地元判定炸裂か、と身構えたが(事実、採点集計中に松田側リングサイドから「大丈夫や!」と選手を励ます声も上がった)、フタを開けてみればユナニマスのタイ人支持でビックリするやら安堵するやら。消極的ファイトのタイ人に正味劣勢の内容でダウンまで奪われては流石に庇いきれなかったという事か。それでも9Rのダウンが無ければ相当際どい採点になっていたはずで、9Rは松田にとって文字通り痛恨のダウンになってしまった。
そして松田はまさかの“東洋ランキングTOB”に失敗。地力の差が著しく、本気には程遠いタイ人に為す術無くあしらわれてしまった。一線級のA級選手とはパンチ力、勝負度胸、経験、いずれの要素も足りない。