駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第5試合・Sバンタム級契約ウェイト(54.5kg)10回戦/●本田秀伸[Gツダ](判定0−2)名護明彦[全日本パブリック]○

メインイベントは、2度の世界王座挑戦経験もある東西ベテラン両者による、再浮上を賭けたサバイバルマッチ。
本田は28勝(14KO)4敗の戦績。94年のデビュー以来、順調に勝ち星を積み重ね、96年には日本Lフライ級王座を獲得。途中、ノンタイトル戦を多く挟む意欲的な活動の中で返上するまで6度の防衛に成功する。しかし02年にはポンサクレックWBCフライ級王座に、03年にはアレクサンドル・ムニョスWBAスーパーフライ級王座に挑戦するが、いずれも判定に涙を呑む。04年には再起を賭けて挑んだ当時無名の名城信男[六島]との一戦に完敗を喫し、一度は引退にまで追い込まれた。しかし現役への未練は断ち切れず06年に復帰、年末には元OPBF王者のクマントーンを破って現在はOPBFバンタム級2位、日本Sフライ級4位までランキングを戻している。
対する名護は27勝(15KO)6敗1分の戦績。95年のデビュー以来11連勝で日本Sフライ級タイトルを獲得し、返上するまで2度の防衛を果たす。99年には戸高秀樹WBAスーパーフライ王座、00年には徳山昌守のWBCスーパーフライ王座に挑戦するが、いずれも判定負けして世界タイトル戦線からの脱落を余儀なくされる。1年余のブランクを経て02年に復帰するが、その後は度々タイ人や新進気鋭のホープに白星とランキングを献上するケースが目立ち、現在はノーランカー。
1R。本田が巧みな身のこなしで主導権を掌握てはいるが、中間距離での牽制・手数の応酬に終始して決め手の無い展開。ラウンド終了直前、名護がストレート1発ヒットさせてこれがジャッジにどう影響したか。
2R。本田がジャブで牽制してペースを作るが、名護が強引に踏み込んで連打をまとめてアグレッシブさをアピール。本田がレフェリーの「ブレイク」があったと誤解して見せた隙にヒットも奪った。本田は手数、それも連打が少ない印象。
3R。本田がジャブ中心に手数を増やし、アッパーなどを交えてヒットも2発、3発。名護は踏み込んで手数を浴びせていくが、これは本田のディフェンスマスター振りが目立つ格好に。
4R。本田が名護の動きを見切っているように映る。ボディワークを駆使して名護の手数を空転させつつ、ジャブ中心にアッパー交えた3連打も披露し主導権の掌握ぶりをアピールする。
5R。このラウンドは、名護がアグレッシブに踏み込んでコンビネーションを披露。主導権の奪取を目指す。本田も相撃ち覚悟で反撃するが、守備力を活かして試合をコントロールする展開に持ち込めず小差の劣勢。
6R。本田のディフェンスが冴える。名護の構成をボディワークとステップで捌きつつ、ジャブで細かくヒットを奪って試合の流れを支配する。しかし名護の抵抗も渋太く、小差のラウンドが続く。
7R。名護が再びアグレッシブに出て本田を守勢に追い込む。それでも本田は渋太く手数を出して必死に抵抗。だが主体的な攻撃姿勢に欠け、微差以上の劣勢か。
8R。本田が距離を巧みに操りながらジャブで手数とヒット数を稼ぐ。名護の攻勢は距離が合わずに不完全な成果に留まる。ストレート1発のヒットが印象的だが、これでどこまでジャッジを味方につけただろうか。
9R。本田の主導権支配ぶりが目立つ。距離を掌握し、細かく動きながらジャブ中心に手数を稼いで名護を攻めあぐませる。クリンチなどのインサイドワークも見せて僅かな優勢の目を3分間キープし続けた。
10R。ラウンド前半は本田の試合運びの妙が目立ったが、後半に入ると名護が右フック3連発で攻勢に出て、本田を守勢に追い込んだ。名護のアグレッシブなラストスパートの前に、本田はクリンチと半ば故意のスリップダウンで時間を稼ぐのが精一杯。
公式採点は葛城98-96、浦谷97-95、島川96-96の2−0で、名護が東洋・日本ランク復帰を決める大きな勝利をゲット。駒木の採点は「A」95-95イーブン「B」97-96本田優勢。
本田は軽くても精度のあるジャブとディフェンスを駆使してほぼ全てのラウンドで主導権を掌握。しかし名護は不完全なヒットが多いもののアグレッシブに強打で攻めて印象的なシーンを度々作り対抗。まさに採点者の主観と好みがモロに表れるような試合内容となった。しかしナチュラルウェイトのアドバンテージを持つ名護のパンチの方が視覚・聴覚でインパクトが強く、どうやらこれが公式判定の決め手となったようだ。