駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第2試合・Sバンタム級契約ウェイト(54.5kg)10回戦/○坪内達哉[大阪帝拳](判定3−0)森島祐介[岐阜ヨコゼキ]●

坪内は8勝(3KO)1敗の戦績で、現在日本Sバンタム級9位。アマ時代は全日本選手権ベスト8などの実績を持ち、B級デビュー後も意欲的なマッチメイクで、ノーランカー時代から玉越強平[千里馬神戸]を大いに苦しめる(1-2判定負け)など、マニア連の間では以前から密かに注目されていた存在。昨年は9月に元東洋ランカーの宇野寿修[岐阜ヨコゼキ]を圧倒、同じく12月には中井五代[大鵬]に完勝するなど4連勝。玉越戦以後は現役ランカーとの対戦は無いものの、日本ランカーたるに相応しい実力を示している。
対する森島は18勝(5KO)10敗5分。坪内より1年年少ながら今年キャリア10年目のベテランだ。99年に中日本Sフライ級新人王の地域タイトルを獲得し、02年には日本ランキング入りを果たす。その後は大きく負けが込み長期スランプに突入するが、06年に安田眞之介[天熊丸木]を破ってフライ級で日本ランキング圏内に復活する。ただし、今年3月には有富康人[松田]に敗れ、現在は日本ランクからは陥落。安田から併せて奪ったWBCの下位ランク(Sフライ級36位)のみを保持している。
1R。森島はラウンド序盤から圧力かけ、フック上下中心に手数攻めするが、坪内は持ち前の堅いガードをガッチリ。被弾をほぼゼロに防いだ上で逆にジャブ、ストレート、左アッパー、フックのダブル、ボディブローと多彩な攻撃で明確なヒットを連発する。
2R。このラウンドも森島はアグレッシブ。ボディ中心に手数を浴びせ、坪内がガードする範囲の内、外へパンチを散らしてヒットを重ねる。坪内もアッパーとストレート、更にはボディフックを多用してヒットを重ねるも手数負け。クリーンヒットも奪えず、このラウンドは形勢微妙か。
3R。森島の攻勢が続く。ボディへの手数攻めの中に顔面狙いのフックを織り交ぜ、2度3度と有効打を決める。坪内もボディ攻めから左アッパーを有効打するも、ガードに専念する時間が長く手数で負ける。
4R。強引に手数をボディに集める森島、このラウンドも攻勢。一旦は密着距離からの手数で数的圧倒の形勢となるが、ラウンド中盤以降、坪内は中間距離から右ストレート、左アッパーを自在にヒット、有効打して“クリーンヒット”の観点で逆転を果たす。
5R。密着距離の森島、中間距離からの坪内と、共にボディ中心に手数、ヒットを浴びせ合うタフな展開。明確なヒット数では坪内だが、森島は物量作戦で数的優位に立つ。
6R。坪内、このラウンドは機先を制して左ボディのクリーンヒットを連発。これに効かされた森島は目に見えて動きが落ちた。反撃も途切れがちな森島に対し、坪内はフック、ワン・ツー、ボディアッパーを打ち込んでヒットの質・量で大差優勢を築いた。
7R。ここに来て残存体力で勝る坪内のペースに。自分の距離から多彩な攻撃で手数、ヒット数共に優位とする。ラウンド後半に森島も渋太く反撃に出るが、坪内の堅守をなかなか突き崩せない。
8R。完全なる坪内ペースの試合に。ジャブを起点にストレート、アッパーを上下に散らして数的優勢を確保。ガードをダラリと下げてボディワークを使う新味あるディフェンスも披露した。森島はラウンド終盤に意地の反撃に出るが、これもダメージを与えるには及ばず。
9R。中間〜近距離の打撃戦。技巧で勝る坪内がヒット数でリードするが、森島もラウンド中盤以降、渋太く反撃して右を返す。しかし坪内は終盤にもボディへヒット集めて再び確かな優勢を築く。
10R。密着距離の乱打戦。坪内が強引にボディブローを捻じ込んで効かせて先制。森島も左フックで有効打を返すが、坪内のクリンチワークとボディブローに攻めの流れを寸断され、苦戦が最後まで続いた。
公式判定は大黒99-92、宮崎98-92、原田98-95の3−0で坪内。駒木の採点は「A」98-92「B」98-93で坪内優勢。
坪内は序盤相手のしつこいボディ攻めにペースを狂わされたが、4Rに自分の距離とペースを取り戻してからは一方的な展開に。ボディの打ち合いや被弾の多い打撃戦など、タフな試合をフルラウンド全うしたのは大きな収穫。スタミナ難、打たれ弱さは随分と解消されて来ている。
森島はボディ構成で流れを掴みかけたが、そこで逆に左ボディを効かされて失速。それからは二度と主導権を奪う事も出来ず、完敗を喫した。荒削りな技術面をカバーするパワーを発揮したいなら、もう少し階級を下げるべきだろう。