駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第2部第9試合・バンタム級10回戦/○安田幹男[六島](判定3−0)村井勇希[Gツダ]●

メインイベントはマニア向けの実に渋いカード。WBC下位ランカーの安田と、元日本ランカーで最近は積極的に海外遠征を敢行している村井の対決だ。
安田は11勝(9KO)3敗2分。00年にエディタウンゼントジムからデビュー。デビュー戦で敗れ、新人王戦でも西日本準決勝敗退に終わるなど若手時代は目立たぬ存在に甘んじたが、B級時代にはデスペラード泰[金沢]、楠浩明[Gツダ]という後のA級選手に連勝するなど実力の片鱗を覗かせる。03年2月にA級緒戦で敗れて長期ブランクを作るが、05年に六島ジムに移籍して復帰すると、以来負け無しの5連勝。06年には元世界ランカーのハイメ・オルティスを降して下位ランクながらWBCランキング登載された。東洋・日本ランキングには未登載で名目上はノーランカーだが、限りなくランカーに近い存在である。
村井は12勝(3KO)10敗4分。98年にデビュー。00年にはフライ級で西日本新人王となる。勝ち負けを繰り返すタイプの選手で、04年には日本ランクに登載されたが、長期間のキープには失敗している。06年からは積極的にタイ国遠征に出て、世界ランカーとのチャレンジマッチに挑み、敗れはしたものの2試合連続して12R粘りこむなど貴重な経験を積んだ。今回は5月のタイ遠征で世界ランカーのソムサク・シンチャチャワンに6R判定負けを経ての国内再起戦となる。
1R。両者ジャブ中心の探りあい。安田が村井のジャブを捌きつつ、ボディやアッパーでヒットを奪う。村井は手数こそ互角だが、主武器のフック、アッパーが少なく、ここは様子見に徹したか。
2R。このラウンドもジャブでの差し合い中心で、そこからボディブローなどに繋げて細かいヒットを奪い合い互角の展開。しかしラウンド終了直前、村井のストレートと相打ちの形で安田が左カウンターをクリーンヒットさせ、村井を倒して貴重な2点差をゲット。
3R。ジャブ中心の慎重な組み立てが続くが、隙があると見るやKO狙いの強振が飛び交うなど油断ならない攻防戦が続く。村井の右フックがクリーンヒットして印象的だが安田もヒットの質・量を総合すれば接戦。
4R。ラウンド前半は中間〜遠距離での攻防戦で村井が左を3発ほどヒットして先制。後半に入ると安田が密着戦を仕掛けていったが、村井が高速のアッパー、フックで撃退する。それでも安田はラウンド最終盤に反撃を見せて粘り強さをアピールするが……
5R。ジャブ中心、テクニカルでディフェンシブな内容。共に攻めに決め手少なく互角の内容が続くが、ラウンド終了直前に村井の高速フックが決まって僅かなアドバンテージか。安田も細かいヒットをかき集めればジャッジ上接戦だが?
6R。このラウンドも慎重な試合運び。フェイント、ステップ、そして様々なディフェンスワークでお互い相手に的を絞らせない。村井は手数を出すがガードに阻まれ、安田が細かいヒットとラウンド終了直前にロープへ詰めての攻勢で僅かな優勢をアピールする。
7R。守備巧者同士、ロースコアの展開が続く。村井が手数で先攻し、ラウンド後半に入ってフックも決めてヒット数でもリード。安田もガード堅く被弾を最低限に抑え、ラウンド終了直前の打ち合いでも互角に渡り合うが、自分が攻めてヤマ場を作りきれない。
8R。互いにフェイント多用し、静かながら熱気湧き上がるシビアな攻防戦。村井がアグレッシブに手数を出して僅かに主導権支配でリードか。安田も時折攻勢をアピールするなど肉薄するが、手数が少ない。
9R。ラウンド中盤まではジャブ中心の攻防戦。安田がジャブに加えて右ボディにも数発ヒットを集めて僅かにリード。終盤のクロスレンジ打撃戦でも的の内側へ手数を集めて攻勢アピール。村井も攻めてはいるが、軽い印象。
10R。村井がジリジリと圧力かけてガード上ながらフックを放ち先制。その後も先手で手数を見舞っていく。だが安田もガード手堅く被弾を防ぐと、強打を村井のガード上へ放っていってギリギリの局面でもジャッジにアピールを続けた。
公式判定は原田96-93、宮崎96-93、野田96-94の3−0で安田。駒木の採点は「A」95-94村井優勢「B」98-96安田優勢。決め手らしい決め手が無く際どいラウンドの多いジャッジ泣かせの試合。会場内からは村井を支持する関係者・選手の声も複数聞かれたが……
安田が堅いガードと的確なジャブ、ストレートで際どい判定を獲り切った。村井は従来のラフな攻めを封印し、手数中心の手堅い攻めで渋太く対抗したが、2Rのダウンが痛恨。僅差のラウンドの取り合いでも及ばず敗れた。