駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第1部第6試合・Sバンタム級契約ウェイト(54.5kg)8回戦/●中谷年伸[八尾](判定0−3)西正隼[正拳]○

この日はセミ前に8回戦。正拳ジム若手軍団の1人、西がベテラン中谷を迎えてA級初勝利を目指す。
中谷は9勝(3KO)13敗3分。キャリア14年目の大ベテランで、95年のJバンタム級西日本新人王の経歴も。8回戦に上がってからは大きく黒星が先行し、最近は試合枯れの傾向もあったが、今年は4月に馬野晃[ハラダ]を判定で降してにわかに意気揚々。彼にしては比較的短いスパンで今年度2戦目に臨む。
西は6勝(4KO)6敗2分の戦績。02年にデビュー、04年度に出場した新人王戦は2回戦敗退に終わり、戦績も終始5割程度と目立たぬ存在に甘んじてはいたが、それでも徐々に地力を増してA級にまで到達した。05年には、翌年新人王戦線を大いに沸かせた橋詰知明[井岡]のデビュー戦相手を務め、ドローに持ち込む“殊勲”も挙げている。今回はA級緒戦を昨年10月に2RTKOに敗れて以来、9ヶ月ぶりの再起戦となる。
1R。ミドル〜ロングレンジでの攻防。西がアグレッシブに手数を出して先攻も、中谷はガードを固めて被弾許さず、ジャブ中心にカウンターで迎撃する。攻勢か軽打の積み重ねかで本来はジャッジ的に際どい内容だが、公式採点は西が三者一致で10点を獲得。つまり、選手・セコンドの誰もが知らない内にこの時点で既に勝負の行方は大きく傾き始めていた事になる。
2R。中谷がラウンド序盤から手数を出して先手。西はフック中心に反撃するもオープンブローが目立ち、逆に中谷にカウンターを合わされる。しかしラウンド終了直前、西がラッシュに出て一気に形勢挽回。中谷はこれに右ストレート浴びせ足止めするが、ここも公式ジャッジは彼に味方せず。
3R。このラウンドは西が先手。連打を浴びせて手数で大差をつけるが、ヒットには恵まれない。中谷はやや後手に回ってアグレッシブさに欠ける感。反撃は的確だが、威力、手数共に乏しい。
4R。ショートレンジ乱打戦。攻守を目まぐるしく入れ替えつつ、互いに上下へ連打を打ち込んで互角の攻防。共に一発ごとの威力に欠け、形勢は微妙。
5R。ラウンド前半、西がアグレッシブに手数攻勢。命中率は低いが数にモノを言わせてリード。中谷も右ストレートをカウンターで浴びせて反撃するが、西が再度アグレッシブな手数攻めに出て数的優勢を確保。
6R。このラウンドも西が断続的に手数で攻めて数的優勢オープンブローや精度の甘いパンチが気になるが、対する中谷の反撃が散発的な右カウンターだけで、こちらは迫力不足。相対的に西の優勢か。
7R。このラウンドは中谷が手数を意識した先手の攻め。だが一撃の威力不足故にヤマ場が作れず、いつしか試合全体も凡戦ムードに。西がラウンド終盤に抵抗して互角の形勢まで持ち込むが……
8R。互いに手数を意識した乱打戦だが、明確なヒットに乏しくダルファイト気味。西が細かい連打で一応の見せ場を作ったが、中谷は右フックをクリーンヒットさせて効かせるなどして抵抗。ここも形勢は微差から互角。
公式判定は宮崎80-72、坂本80-73、原田80-74で西のフルマーク。駒木の採点は「A」77-75「B」79-77で西優勢。中谷のカウンター狙いはパンチ力が軽かったためか公式ジャッジに全く評価されず。
西が手数で攻め立てて公式フルマークの完勝。しかしオープンブローが多く、威力・精度にも乏しいパンチは、A級で戦うには心許無い戦力である。一発一発のパンチを大事に磨き上げる鍛錬を怠らないで欲しい。
中谷はカウンター狙いでチャンスを窺ったが、主武器の右ストレートの威力が弱く、ダメージ量を稼げないまま相手の物量作戦に沈んだ。担当ジャッジの採点基準が自分に味方していない事を(当然だが)知らないまま戦っていたのが結果論的には最大の敗因になるのかも。