駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第2部第7試合・Sフライ級8回戦/○本田猛[尼崎](判定3−0)楠浩明[Gツダ]●

セミファイナルは05年12月以来2度目の顔合わせとなる8回戦。前回は当時B級だった本田が、既にA級で1勝していた楠に4RTKO勝ちを収めている。
本田は9勝(7KO)3敗3分の戦績。02年にデビュー、03年・04年と新人王戦にエントリーし、04年には西日本決勝まで進出するが、久高寛之[Gツダ]に敗れた。その後は6回戦で4戦足踏みを強いられたり、昨年エントリーしたA級トーナメントでも緒戦を勝ち上がるも負傷で決勝の棄権を余儀なくされたりと、波に乗ろうとして乗り損ねている現状である。今回は1年ぶりの再起戦。A級上位進出を目指す道の第一歩である。
楠は10勝(8KO)5敗3分。00年にデビュー、3連勝を挙げて01年の新人王戦にエントリーし、西日本準決勝では現日本ミニマム級1位の堀川謙一[SFマキ]を降しているが、決勝で後に同僚の世界王者となる高山勝成[エディ→Gツダ→真正]と対戦し、判定負けを喫する。その後も藤原工輔[正拳・引退]、大場浩平[スペースK]、安田幹男[エディ→六島]ら日本〜世界ランカー級選手らと拳を交える濃密なキャリアを積み重ね、06年7月には当時日本ランカーの小室裕一郎[新松戸高橋]を破って1ヶ月間のみながら日本Sフライ級10位に登載された。その後2戦は勝ち星に恵まれていないが、リベンジを果たすと共に再浮上のきっかけを作りたいところだ。
1R。中間距離で、フェイントと捨てパンチで駆け引き中心のラウンド。本田が先手で攻めてやや手数で優勢に立ち、右ストレートや細かいジャブのヒットを重ねる。楠もジャブ、ボディブローで散発的にヒットを返してほぼ互角。
2R。本田が細かくステップを使いつつ、左ジャブ中心に手数を浴びせて先手、先手の攻め。楠は主導権を奪われた影響か足が重い。ボディを強引に攻めるが、逆にワン・ツーを被弾して劣勢。
3R。このラウンドも本田はステップ使いつつジャブ中心。これに対して楠は追い足を使って圧力かけ、思いストレートをボディに打ち込んで攻勢点をアピール。両者の攻めの力感の差は明らか。
4R。ラウンド前半は楠が強い圧力、追い足と共に右ストレートを次々とヒットさせてリード。後半に入ると本田もサイドステップから右アッパー、フック3連発で挽回。だがそこから楠が再度攻勢に転じて右を浴びせていった。
5R。ジリジリと追い足を使う楠は左ボディ、右ストレートと単発ながらヒットを重ねる。しかし本田もサークリングしながらジャブ、ワン・ツーで手数を稼ぎつつ渋太くヒット数も稼ぐ。本田の攻めは決め手に欠ける感もあるが、数的優位との兼ね合いで微妙。
6R。動き回って仕掛ける本田に対し、足を止めて構える楠。楠の単発強打、ワン・ツーが断続的にヒットするが、動き絶やさずあの手、この手で攻める本田の動きも印象的。左右のデコイ・ブローから左ボディへ繋ぐなど、手数とヒットを両立させるような攻めも展開する。
7R。楠は本田の動きを見切り、足止めの効果も兼ねたストレート、左ボディで主導権を奪う。リズムを見失った本田はなかなか手数を稼げない。
8R。やや手数が少ない打撃戦。共に相手の守備の穴をあざとく突いて、少ない手数をヒットに直結させてゆく。ほぼ互角の攻防戦が3分間続いた。

公式判定は原田78-76、北村78-76、坂本77-76の3−0で本田。駒木の採点は「A」76-76イーブン「B」79-77楠優勢。半数以上のラウンドが優劣微妙な上に、本田のステップワークを使った手数攻勢と楠の“クリーンヒット”小差優勢のどちらを採るかで、いかにも採点者の判断が分かれそうな大接戦。楠の動きが小さかった分、本田の動きが主導権支配アピールとなって公式ジャッジの目を引いたか。会場内の関係者・マニアからは若干本田を推す声が多かったものの「どちらにしてもほぼドローの小差」という見解で一致していた。